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｢先輩、これは…｣
何かを言いかけたベクを遮るようにドアが開いた。
そして中に入ってきた3人は私たちを見た途端口を噤んだ。
2人は驚いて動揺した様子で、チャニョルは大きな目をさらに大きく見開く。
そして3人とも、次第に顔が強ばっていった。
それを見てついに、大きな音を立てて自分の中で何かが壊れた。
掴まれていた手首を乱暴に振り解くとベクは驚いた顔で私を見て、女の子たちが小さく声を上げたのをすごく遠くで聞いているような気がした。
｢こんなところ…！好きでもなんでもなかった！！｣
初めてこんなに大きな声を出した。
思い切り何かをぶつけるように投げ付けたのは言葉だったろうか。
それとも、人を傷つけるナイフだったろうか。
｢ただの暇つぶしだった！やっと卒業出来て清々した！！｣
震える声でただ、叫ぶ。
ぶつける。
そして、大切なものを、壊した。
口元を抑えて呆然とする2人と、呆気にとられたように立ち尽くすチャニョルとひどく傷付いた顔をしたベクを見た途端身体中の血が冷えきったように感じた。
なんて事を言ってしまったんだろう。
こんな事1度も思ったこともないのに。
大好きだったのに。幸せだったのに。卒業するのが寂しくて仕方がなかったのに。
その思いとは裏腹に言葉はとめどなく溢れてくる。
傷口を抉ったところからどくどくと、どろどろと。
｢邪魔ならそう言えばよかったのに。私馬鹿みたいじゃん、なんのためにここに3年間もいたんだろ。ほんっと…馬鹿みたい｣
｢先輩、俺達は｣
｢何？言い訳でも聞かせてくれるの？｣
ベクの声を遮って強がって笑った。
きっと今までの私を見ていればこれが強がりなことくらいバレてる。
でももう、後戻りなんて出来ない。
｢皆が思ってるとおり私は自分の意思なんて無かったから。人に合わせて愛想笑いしてるだけだったから。なんとなく流されていただけ。思い出なんて…1つもない｣
自分で自分を深く傷付けながら、それでも涙を押し殺して笑って見せた。
｢さようなら。きっともう、二度と会うことも無いね｣
皆の顔を見ないまま、ドアノブに手をかけた。
こんなのが最後になるなんて。
本当に私って最低で最悪。
｢先輩…！俺は先輩の事が｣
言いかけた言葉はドアが閉まる音で遮られた。
何を伝えようとしていたのかは考えない。
私のことは悪者にして。
綺麗な思い出なんて1つも残さないで。
そうしてくれないと、ここに未練が残ってしまうから。
*
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています！ありがとうございます！！ (2018年3月15日 18時) (
レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…！ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです！切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです！更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます！私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K
| 作成日時：2018年1月31日 22時
