戻れるのなら ページ42
ベクがお手洗いから戻ってくると少しの沈黙が続いた。
何かが始まる前の静寂だ。
それからゆっくりと口を開いた。
私から話さないいけないから。
｢あのね、ベク。あの日のこと…話したい｣
｢そうですね。そのための今日ですから｣
ベクは微笑んではいるけれど少し表情は強ばっている。
私だけじゃない、怖いのは。
私だけじゃないんだよ。
｢一応断りいれとくど、俺はここにいても良いの？｣
ミンソクさんはベクにも確認をした。
ベクは笑ってもちろんですよ、と言う。
｢ヒョンのおかげで今こうやって話せてるので。それになんか、ヒョンには聞いてて欲しいから｣
これで逃げることは出来ない。
ミンソクさんがいることで逃げ場は完全になくなった。
｢まず、謝りたい。本当にごめん。ほんとに酷いこと言った｣
目を逸らしたくなるのをこらえてじっとベクの目を見たまま言った。
ちゃんと向き合うって決めたんだもん。
｢そうですね、正直かなり…傷付きました｣
そう言ったベクは空笑いをしてグラスに手を伸ばし、ひと口飲んだ。
あの時見た顔が今のベクと重なって見える。
胸がズキズキと痛んで、苦しくなってきた。
けれど私が今感じている痛みなんかより、ベクは何倍も痛かったはずだ。
｢でも先輩がどんな気持ちでああ言ったのかも分かってるつもりだし、今の先輩を見たらあの日の事を後悔してるのも分かってます｣
｢それでも…言っちゃいけないことを言った｣
声が掠れた。
あの日の私の言葉がどれほど皆を傷付けたか、それを考えただけで胸の奥が締め付けられるんだ。
思い出す度に、何度も何度も。
もしあの日に戻れるのなら。
絶対にあんな事は言わないし、笑顔であそこを離れられるのに。
私の青春はあそこだったって胸を張って言えるはずだったのに。
でもそんな思いは叶うはずもない。
過ぎてしまったことをやり直そうなんて、そんな都合の良いことは出来やしないんだから。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています！ありがとうございます！！ (2018年3月15日 18時) (
レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…！ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです！切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです！更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます！私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K
| 作成日時：2018年1月31日 22時
