単純なんです ページ27
入ってからはもう促されるまま動くだけ。
何故か部屋にある女物のスウェットを渡されたと思えば着替えろと言われ、着替え終わると寝室へと案内されミンソクさんがいつも寝ているだろう綺麗に整頓されたベッドに寝かしつけられ枕元に水が置かれた。
｢なんかもうほんとにすみません…私は今後どうやって恩返しすれば良いのか…｣
｢良いからとりあえず寝ててください。薬はあるけど食べ物が無くて…自分じゃ作れないしコンビニでなんか買ってきます｣
｢えっそんなことまでしてくれなくても…｣
起き上がりかけた私を制するように顔の前に手がすっと現れたので頭を浮かしたまま固まった。
｢病人はおとなしくしててください。ちゃんと寝ててくださいよ？｣
言い聞かせるように人差し指で眉間の当たりをつつかれてそのままボスっと枕に頭が落ちた。
ミンソクさん、ちょっとだけ乱暴。
部屋から出ていくミンソクさんを目で追って、玄関のドアが閉まったのを確認してからガバッと起き上がった。
絶対やばい、この状況。
いくらなんでもお世話になりすぎだしミンソクさんかっこよすぎだし…これ以上一緒にいると本当にやばい。
けれど急に起き上がったせいなのか視界がぐらつき、体を元の位置に戻した。
情けないけれどこれ以上動き回る元気も体力もないようだ。
余計な事は考えるな。
良くなることだけを考えていれば良い。
目をつむると案外すぐに睡魔がやってきた。
ベッドに深く沈みこんでいく感覚とともに思考が停止した。
そしてそこで見たのは制服を着た私。
私なのに、私を見ている。
部室の空気がとても重くて、目の前にいるベクは私の腕を掴んだまま焦ったような顔をして他の皆はバツが悪そうな顔をしている。
私は、私の顔が歪むのを見た。
そして私はその後しようとすることを止めようとした。
手を伸ばしてみたけれどそれは私に届かなくて。
私は掴まれていた腕を振りほどいて叫んだ。
｢Aさん｣
何が起こったか分からないまま目を開くと心配そうな顔をしたミンソクさんが私を覗き込んでいた。
…そうか、夢か。
｢すみません、私寝てたみたいで…｣
｢寝ててくださいって言ったんだから寝てていいんですよ。でもうなされてたし汗が酷かったので起こしちゃいました。嫌な夢でも見ました？｣
｢…分からないです、そうなのかなぁ｣
笑ってみたけど苦しくなるだけだった。
どうやら私は、あの日から逃れることは出来ないみたいだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています！ありがとうございます！！ (2018年3月15日 18時) (
レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…！ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです！切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです！更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます！私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：K
| 作成日時：2018年1月31日 22時
