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｢ひとつ、言っておきたいことがあります｣
隣にいるベクの顔を見ることが出来ないまま耳を澄ませた。
凄く怖かった。
それでもじっと、言葉を待った。
｢俺は今の先輩のこと、嫌いじゃないです｣
その言葉におもわず顔を上げた。
崩れる自分を想像しながら身構えていたのに、聞き間違いでは無いのか疑ってしまった。
そしてそこに見えた表情もまた、想像とは違う。
とても優しく微笑んでいた。
｢背筋がピンと伸びてて、笑顔がキラキラしてて、いつも前向きで…本当に素敵だって思いながら見てた｣
否定されるかと思っていた今の私をそんな暖かい言葉で包み込んでくれるなんて。
言葉が詰まって何も言えずにいるとベクが目を合わせたまま、ゆっくりと口を開いた。
｢でも、輝き続けることに疲れた時は呼んでください、いつでも。今の先輩も昔の先輩もどっちもちゃんと受け止めます｣
ああ、やっぱり。
ベクと一緒にいると気が緩んでしまう。
暖かく包み込むふわふわの毛布みたいなんだ。
1度その暖かさを知ってしまうとなかなかそこから抜け出せないの。
｢私、無理してるわけじゃないよ。昔の私と違うのは分かってるしびっくりしたとも思う。私が変わりたかったの。それだけなんだよ｣
この言葉に嘘はない。
でもたまに分からなくなるんだ。
どの自分が自分なのかが、分からなくなる。
｢私不器用だから、どっちかしか出来ない。だから私はこれからも今のままでいるよ｣
ベクは小さく相槌を打った。
今の私を嫌いじゃない、素敵だと言った。
でも、ベクは今の私より昔の私の方が好きなのかな。
｢でももし…今のまま進んでて苦しくて息が上手に吸えなくなったら…その時はベクのこと呼んでもいい？｣
｢吸えなくなる前に呼ばなきゃ意味無いじゃん｣
いつものように声を上げて笑いながらそう言うベクに私も笑った。
ああ、本当に私は甘えてばかり。
本当ならあの日のこと、私からちゃんと話さないといけないのに。
聞かれないからってこうやって、後回しにしていくんだ。
｢うん、そうする｣
後にすればするほど話しにくくなるのも罪悪感も増してくばかりなのも分かっているのに、私は微笑んでただそう返した。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています！ありがとうございます！！ (2018年3月15日 18時) (
レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…！ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです！切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです！更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます！私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K
| 作成日時：2018年1月31日 22時
