ゆっくり、ゆっくり ページ18
電車に揺られながら、あまり顔を見られたくなくて不審がられない程度に横を見た。
思い出すのはさっきの言葉。
もう会うことも無いと思ってました、だって。
私もそう思ってたのにな。
ああ、お酒のせいなのか気持ち悪くなってきた。
もう頭の中はぐちゃぐちゃだ。
ゆっくりと息を吐き出し目を閉じた。
そうすると卒業式のあの日が目の裏に鮮明に浮かび上がってきてすぐに目を開けた。
｢Aさん、大丈夫ですか？｣
｢あー…なんか流石に飲みすぎたっぽいです｣
｢あと二駅なんで頑張ってください｣
気遣う声に頷き顔を伏せた。
電車の揺れがまた気分を悪くさせるのだろう、早く外に出て風に当たりたい。
なんとか気持ちの悪さを堪えて電車から降りると夜風が頬を撫でた。
空を見上げると薄らと星が見える。
｢ちょっとそこで待っててください、すぐ戻るんで｣
ベンチを指さされたのでどこかへ消えていくミンソクさんの背中を見送り、素直にそこに腰掛けた。
しばらくぼうっと弱々しく輝く星を眺めていると近付いてくる気配に視線を落としたのと同時に頬に冷たい何かが触れて飛び上がった。
｢どーぞ｣
目の前に差し出されたのはペットボトルの水。
どうやら自販機で買って来てくれたらしい。
どこまで気が利くんだ、この人は…
｢ありがとうございます…あーもー情けない｣
｢あれだけ飲んだらそりゃあそうもなりますよ…気にしないでください｣
自分はもっと飲んでたくせに。
酔ったことはあるって言ってたし、きっと気を許した人の前で飲んだんだろうなぁ。
｢ミンソクさんは誰と飲んだ時に酔ったんですか？｣
｢友達ですよ｣
｢ふうん…｣
｢それ絶対信じてない時の顔ですよ｣
不服そうな顔をしていたらしく突っ込まれてしまった。
彼女さんと飲んでた時に酔ったのだと勝手に推測していたので確かに信じてはいなかったのだけど。
｢ほんとに友達です、女の子と飲んで酔ったことないですもん｣
｢弱い所は見せたくない系ですか？｣
｢ん〜…無意識にそうしてるのかもですね｣
なんとなくミンソクさんぽい。
まぁミンソクさんを語れるほどミンソクさんのことを知っている訳では無いけれど。
並んで座り空を眺めているだけの時間が妙に居心地が良くて動きたくなかった。
でも、きっともうすぐでミンソクさんはそろそろ行きますかって言うんだ。
薄らと見える星に目を細めながら、もっと時間がゆっくりと進めば良いのにとぼんやり考えた。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています！ありがとうございます！！ (2018年3月15日 18時) (
レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…！ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです！切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです！更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます！私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K
| 作成日時：2018年1月31日 22時
