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｢おいで｣
優しく微笑む顔から目を逸らしそうになるのを堪えてその言葉に従いけして大きくはないソファに腰掛けると肩が触れあった。
｢今日あったかいね、たまには少し散歩でもしてみない？｣
｢いいね、たまにはそういうのも｣
このまま部屋にいるよりはそちらの方が私も変に意識し続けなくて済むかもしれないから。
室内だとどうしても距離が近くなって意識してしまう。
｢このコーヒー飲み終わったら行こうか｣
｢…うん｣
私が入れたコーヒーを飲む横顔をちらりと盗み見してすぐに前を向いた。
この距離で目が合ってしまったら挙動不審になってしまう自信がある。
おかしいんだ、この前からチャンさんといるとソワソワするし苦しくなる。
この気持ちがなんなのかは知っているつもりだけど認めてしまったらよけいに意識してしまうのは目に見えている。
だから今は演じるだけ。
これは私じゃないんだと言い聞かせた。
｢Aってコーヒー煎れるの上手だよね｣
｢えっ｣
｢美味しいもん｣
上手と言われた事に驚いた訳では無い。
突然名前を呼び捨てされたので驚いたんだ。
｢そうじゃなくて…名前…｣
｢ああ、その方が自然に呼べるから。Aもチャンさんなんて他人行儀な呼び方しないでね？｣
そんな。
いきなりそんなにハードルの高いことをさせるなんて。
あくまでチャンさんを“彼”にすることで私は現実との境目を作っていたのに…
｢呼ばないといけませんか？｣
｢うん｣
有無を言わさず、といった感じに微笑んでいるチャンさんは今おそらく私が名前を呼ぶのを待っている。
｢…イーシン｣
｢おっけー｣
小さく呼びかけると言うよりは呟いたそれにも満足そうに笑って再びコーヒーを飲み始めた。
こっちの気も知らないで…
私はこんな感じで自分の感情抜きで接する事が出来るのだろうか。
物語の主人公、つまり今の私が積極的というよりは控えめな性格なことに我ながら感謝した。
｢それじゃあ行こっか｣
靴を履いて顔を上げると目が合ってまた苦しくなった。
いちいち優しい顔をするのをやめて欲しい。
｢Aもスニーカー持ってるんだね。いつもヒールだから新鮮！｣
｢一応…散歩って言ってたから歩きやすい方が良いかなって思ったんだけど｣
｢うん、その方が良い｣
とりあえず名前を呼ばれる事と笑いかけられることに慣れることに専念しようと心に決めた。
そうじゃないと心臓がいくつあっても足りない。
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K(プロフ) - さえさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けたようで嬉しいです(T_T)私もさえさんが大好きですー！笑ありがとうございます、またどこかでお会い出来ると嬉しいです(^o^) (2017年10月18日 21時) (
レス) id: 2082ebeeaa (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - リコさん» コメントありがとうございます！お気に入りだなんて嬉しすぎます(T_T)こちらこそ最後まで読んでくださってありがとうございました！！ (2017年10月18日 21時) (レス) id: 2082ebeeaa (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - satoetu61さん» 初めまして！ドキドキしながら読んでくださっと聞いてとても嬉しいですー！いつかまたイーシンさんのお話もかければ良いなとは思っているので気長にお待ちください(^o^) (2017年10月18日 21時) (レス) id: 2082ebeeaa (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - だいすきでしたー！キュンキュンしっぱなしでした！更新お疲れ様でした。 (2017年10月17日 3時) (レス) id: cd64ed3849 (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - ずっと読ませていただいてました！私のちょ〜お気に入り作品です★ありがとうございました！！ (2017年10月16日 22時) (レス) id: ad5f71dec1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：K
| 作成日時：2017年6月13日 23時
