29page ページ29
ようやく意識がしっかりしてきた時にはいつの間にか私を起きあげて優しく抱きしめていた。
｢…ひどいですよ｣
私の声は弱々しくて威勢も何もあったもんじゃなかった。
こんな姿、あの編集者が見たらなんて言うだろう。
｢誰かに見られたら、どうするつもりだったんですか｣
｢安心してくださいよ、僕は必ず貴方を守ってみせますから｣
｢…いつまで役になりきってるんですか｣
今のチャンさんの言葉も私の話に出てくる。
怒っている私に対していまだに演技を続けるチャンさんに少し苛立った。
｢考えたんですけど…僕、パクさんがこの話を書いている間はずっと、この役になろうかと思うんですけど、どうです？｣
言っていることが1ミリも理解出来ない。
まだ上手く力が入らない腕を奮い立たせて抱き締められていた胸の中から抜け出した。
｢何を言って…｣
｢僕は主人公の心の拠り所。辛い時にはいつも傍にいて慰めてくれる人。寂しくなったらいつでも駆け付けて隣にいる人。｣
｢そんなのもう話の内容とは関係無くなってしまうじゃないですか…！この話の連載は暫く続きますしベッドの中の話がメインなんですよ？｣
チャンさんの突拍子も無い発言に混乱していつもの私からは掛け離れた動揺する姿を見せてしまった。
もう何度も私らしくない姿を見られているのに、それでも嫌だった。
｢でもあの2人の間にもベッドの中以外の生活はある。それがあってからこその行為でしょう？パクさんもそういう想像が出来た方がより良いものが書けるとは思いませんか？｣
最もらしいことを言って私を誘惑しようとする。
現に少しだけまた、その言葉に傾きかけているんだ。
｢それでもやっぱり、そこまでする必要は…｣
｢パクさんが現状のままで良いなら構いませんよ。それなりのものは書けるのに何故か心に響かない。そう言われても良いのならこれ以上は何も言いません｣
つまり、チャンさんも私の作品を読んでそう感じていると言うことだ。
昔、わくわくしながら読んでいた作品の作者がどんどん落ちぶれていくのを見ているんだ。
｢でもこれ以上負担をかけるわけには…｣
｢言いましたよね？僕は、パクさんのきっかけになりたい｣
そう言い私の頬を両手で包みそのまま顔をあげさせた。
しっかりと絡み合った視線が解ける事は無かった。
｢パクさんが書いた言葉ですけど…あれは僕の本心です｣
口だけかもしれないその言葉に、私は救われた。
救われて、しまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 815人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「EXO」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
K(プロフ) - さえさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けたようで嬉しいです(T_T)私もさえさんが大好きですー！笑ありがとうございます、またどこかでお会い出来ると嬉しいです(^o^) (2017年10月18日 21時) (
レス) id: 2082ebeeaa (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - リコさん» コメントありがとうございます！お気に入りだなんて嬉しすぎます(T_T)こちらこそ最後まで読んでくださってありがとうございました！！ (2017年10月18日 21時) (レス) id: 2082ebeeaa (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - satoetu61さん» 初めまして！ドキドキしながら読んでくださっと聞いてとても嬉しいですー！いつかまたイーシンさんのお話もかければ良いなとは思っているので気長にお待ちください(^o^) (2017年10月18日 21時) (レス) id: 2082ebeeaa (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - だいすきでしたー！キュンキュンしっぱなしでした！更新お疲れ様でした。 (2017年10月17日 3時) (レス) id: cd64ed3849 (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - ずっと読ませていただいてました！私のちょ〜お気に入り作品です★ありがとうございました！！ (2017年10月16日 22時) (レス) id: ad5f71dec1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：K
| 作成日時：2017年6月13日 23時
