「全てが繋がった」−善逸side− ページ17
気づけば演奏は終わっていて、アコギを片付け帰る支度を始めたAちゃん。
話しかけるべきか、そうじゃないか
迷っているうちにすぐに彼女は俺の存在に気づく
「っ、あれ?……我妻先輩…?」
その顔は少し青ざめた様子で
その時のAちゃんの音と言ったらもう暴れまわっている。
「……ごめんね、盗み聞ぎするつもりはなかったんだけど…さ」
いや、本当に。
そんなつもりなんてなかったし、俺のこの感じた違和感が気のせいだっていうなら今から俺がしようとすることはお節介だし、やめるけど
「誰かに宛てたラブソング…?」
「っ……」
だからあえてぶっこんだ質問させて。
「だとしても、ちょっと苦しい音出し過ぎじゃない?」
「……」
ラブソングって確かに切ないバラードものも多いけど、これはその比じゃないよ
だって君の音
「……歌い終わっても、その苦しい音は止まらないね」
俺は君から聞こえるその苦しい音の正体がわからない。
君にそんな苦しい音を出させてる人がいったい誰なのか、まだわかんないから
無言でいるなら、俺はお節介をしてしまう
「……失礼します」
(やっぱりあの曲は"誰にも聞かれたくない曲"だったんだね)
歌詞も、Aちゃんから聞こえる音も、すべてがそう奏でている
けど…けどさ、そんな音出されたら本当ほっとけないよ
だってそれって
(気づけてあげられているのは"俺だけ"じゃないか)
だから彼女を追いかけて、追いかけて、自分の耳でちゃんとその音色をわかっていること伝えても彼女は走る足を止めてくれない。
(どうしたらいい…っ)
そう思っていたら彼女は少し先の美術室の前で足を止めたのだ
(美術室……?なんでまた……)
ふと、少し開いた扉の向こうから宇髄先生の声が聞こえてきていた
それを聞いているAちゃんの顔は
「……Aちゃん?」
今まで見てきた表情の中で一番柔らかく、更にはちゃんと恋をしている女の子の顔している
―…その顔で全てが繋がった
好きな人いるか聞いたとき、複雑そうな顔をしたのをみて最初は良い思い出がないのかなぁなんて考えた事もあったけど
全然違うね。
あぁ、泣きそうな顔……
そうか
君にそんな音を出させてた人は
「ねぇ、先輩。先生の好きな人、知ってる?」
「……うん、知ってる」
先生、だったんだね________
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作者名:倉狩莉緒菜 | 作成日時:2020年4月26日 16時