【09】 ページ38
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和也「Aっていい匂いするよね」
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首元を掠めた唇。
こっち向いて、と言われて振り向けば飴玉を食べるように私の唇を舐めた彼の舌。
下唇を甘噛みしてから、舌をするりと器用に口に入れて目を少し開ければ和也の目は少しだけ開いていて
私は頬に添えられた手に、自分の手を添えて目をまた閉じた。
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やがて名残惜しく離れる唇。
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「…っ、…どんな匂い？」
和也「…美味しそうな匂い」
「なにそれ…」
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たまにはここでしてみる？って笑う和也は
私に決定権なんてあるはずもなく。
既に私の服の裾からひんやりとした手を忍ばせてる。
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刹那
さっきの女の子の涙が思い浮かぶ。
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「…ねえ、かずなり…？」
和也「…ん？」
「さっき…、エレベーターで女の子とすれ違ったの」
和也「…それで？」
「その子…、和也と同じ匂いし…んんっ」
和也「もう黙って」
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言い方は優しい。でも瞳は笑ってなかった。
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きっとあの子は和也が気にくわないことをしたんだ。
独占欲？束縛？干渉？
和也はきっとそうやって要らない女をどんどん捨てていって美味しいものだけを食べて生きていく。
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この恋はいつ壊れるか分からない。
好きだと言ったら恐らくすぐ壊れる。
きっと私がまだ引きとめられているのはーーーー…既婚者だからだ。しかも子持ち。
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裏切ることができない対象があるから。
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ザーーーーーーーーー…と雨が打ち付けるのは私の胸か、はたまた窓か。
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「…和也？」
和也「…ん？」
「私のこと好き？」
和也「好きだよ」
「…本当に？」
和也「本当」
「かずな…」
和也「ナニ？今日はイイコじゃないね」
「…っ」
和也「もっかいしないと気が済まない…？」
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くくくと喉を鳴らして笑う和也は、ぐるんとまた私に覆いかぶさって首元に唇を埋める。
その唇でさっきまであの女の子の体を愛してたのだろうか。
唇を塞いだのだろうか。
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「…かずなり」
和也「なあに」
「…、和也」
和也「黙ろっか。ね？」
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瞬間、電話の着信音が鳴り響く。
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