【08】 ページ37
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和也の部屋から出てエレベーターを待って
エレベーターの扉が開いたとき、何処かで見たことがあるような綺麗な女の子が出てきて
ペコリと頭を下げて私の横を通り過ぎる。
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私は平気な顔をしてエレベーターに乗り込む。
扉が閉まる直前見えたのは
その女の子は、私が出てきた部屋の扉の向こうに吸い込まれていた。
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電車に乗ってる最中、あの綺麗な女の子はとあるファッション雑誌のモデルだと言うことが分かった。
ガタンゴトン…と揺れる肩。
分かっていたはず。彼がそう言う人だって
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分かっていたはずなのに、不思議と目頭が熱くなる。
そもそも私は既婚者だ。帰るべき場所がある。守るべきものがある。
私は責められるべき立場に立っている。…だからあの人を責める権利なんてどこにもない。
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電車が我が家の最寄駅に着いて降りるホーム。
その時に思った。
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和也に、本命の彼女はいるんだろうか。
あの人を本気にさせる女はいるんだろうか。
でもその質問は愚問。
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和也に特定の彼女がいないと知ったのは雨の日。
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いつの間にか「当たり前」と化していた逢瀬。
最初は和也から来ていた連絡もいつの間にか「私から」していた連絡。
ジメジメとした温度に、もう見慣れてしまったエレベーターの扉が開くと
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そこにはまた違う可愛い女の子がいて、その女の子の大きな瞳には涙が浮かんでいて
すれ違い様、香ったのは和也の首に鼻を埋めると香るブルガリの香水。
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ガチャ…と扉を開けてリビングに向かうと和也は背中を丸めて
いつも私の頬を撫でる両手でコントローラーを握りしめて知らないゲームと格闘してた。
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和也「…あ、来た？」
「なにしてるの？」
和也「見てわかんない？ゲームよ、ゲーム」
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あぁっ、くっそ！
舌打ちしてコントローラーを投げ捨てた彼の目の前の画面はゲームオーバー。
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和也がこちらを振り向いて、おいでと手招きする。
私の足はまるで操り人形のように彼に向かって歩いて
足の間にすっぽり包み込まれて肩に顔を埋められた。
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