【03】 ページ32
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急に目の前に出されたブルーのカクテル。
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そのブルーのカクテルにゆらゆら映る私の瞳。
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「え…、あの…？」
＊「あちらのお客様からです」
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え、なにそのドラマみたいなおしゃれ展開。
こういうの現実に起こり得るの？って目を大きく見開いたまま右を見ると
そこには全身が黒、の男の人。
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全身が黒いからか、その人の肌はやけに白くて
ニンマリ微笑んだ口元には同じく黒いホクロが動く。
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お礼を言おうとその人の方へ向かって
カウンターに座る彼に後ろから話しかける。
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「あの…すみません、ありがと…」
「う…ございま…す……んんっ」
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瞬時だった。その人の左手が見事に私の口元を覆って
私は声が出せなくなる。しかもその行動さえスマートで
まるで最初からこうなることを予知していたかのよう。
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でも私は何故自分が口を手で塞がれたのか分かっていた。
世間は狭い。
そして芸能人は意外に身近にいたりする。
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その人が顔を上げて、目と目があった刹那。
恐ろしく私の身体は疼きだした。
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透き通る茶色い瞳はテレビで見るのと同じ。
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ぱちぱち、とカールさせた睫毛を何度か上下に動かしていると
ククク…と静かに彼が愉快に笑う。
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それからそっ…、と私の口元を塞いでいた手を離して
私の息で湿っているそれを自分の口元に持っていき
人差し指を鼻に当てて
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“ナイショ。”
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声を発さず、彼は口を動かした。
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