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「ご飯できたよ、食べようー」
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私は平然を装い、テレビのリモコンを手にしてプチッとチャンネルを変えた。
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ナギサ「あれ、ままニノだよー」
拓真「そうだよ。見なくていいの？(笑)」
「だから別にニノが好きなわけじゃないの！(笑) たまたまドラマで見てた役がかっこいいって言ったらナギが勘違いしただけよ」
拓真「なんだー、Aがアイドルオタクになるところも見てみたかったんだけどな」
「やめてよ、もう。ほら食べて食べて」
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うまく笑えているのだろうか、私は。
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和気藹々とした食事が済むとナギサと拓真は二人でお風呂に入ってくると言ってお風呂へ。
束の間の一人の時間。洗い物をして
ジャーーーーー…と流れ落ちる水の塊を見つめながら罪悪感という砂を噛みしめている。
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ピロン、と鳴り響くスマホ。
キュッと蛇口を閉めて、近くにかけてある黄色いタオルで手を拭いてから
指紋認証でロックを解除してから、ラインを開く。
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「……」
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ゾクゾク…と粟立つ背中。
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和也【旦那の前で俺のテレビ見た？】
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和也【ナギサちゃんの前で俺のこと見た？】
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和也【見ないか(笑)。だってアナタ、そういう人だもんね】
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和也【ねえ】
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和也【明日の夜、オフになっちゃった】
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和也【どうする？】
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捕らえようのない背徳感。
カチ、カチ…と時計の針の音。微かに聞こえてくるお風呂場からのナギサと拓真の笑い声。
私の視界に映り込む、ナギサの大好きなあんぱんまんのぬいぐるみ。
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この男は狡い。
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“どうする？”と最終的な判断はすべてこちら側に委ねさせるのだ。
委ねさせて、自分は悪くないように。
“あくまで”私が決めた事実だということを埋め込ませるために。
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俺は誘っていませんよ、と
平気な顔して憎く微笑む。
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【あいたい】
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臍の部分が疼きだす。
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和也【わかった】
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あの男につけた爪の痕はもう消えてしまっただろうか。
あの男に染み付けられた残り香はまだ私の胸を掻き立てるというのに。
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