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ふわふわ、ふわふわ。
通学電車に揺られながら、脳内をエンドレスで、昨日の出来事が巡る。
先生の未来なんか要らない。
ただ、今日も先生と一緒にいられて、
明日も同じように一緒にいられて、
それが出来るだけ続けばいい。
体に残る痛みが、私を強くする。
･
講義を終えて、いつものように中央棟に向かう。
いつものようにエレベーターに乗り込み
そして6階のボタンを押した。
自然と足が向く17号室。
今日もまた、ノックをして、
「失礼しま……」
「ん？どちら様かな？」
……………え？
･
「え、あ…れ」
「どこかと間違えたかな？」
知らない…人？
「あれ、ここ…６階の１７号室…」
「うん、そうだね。僕の研究室です」
ｰｰｰｰｰ知らない。この人、知らない。
「え、でも…昨日まで…」
「あぁ、昨日までゼミ生の誰かに占領されてたのかな。実は不注意で怪我をしてしまいましてね。３週間ほど留守にしてたんですよ。」
「……え、じゃあ、二宮先生は…」
「二宮？」
「先生の代わりの方だったんですかね、二宮先生…」
「いえ、私の留守は相葉先生にお願いしていたはずですが」
ｰｰｰｰｰじゃあ、あの人は……誰
放心状態のまま、部屋を出る。
プレートには、『風間俊介』と書かれていた。
大野先生も、
学生課の職員さんも、
マミちゃんも、
マミちゃんの友達も、
誰ひとりとして
二宮先生を、知らなかった。
感触を覚えてる。
入れてくれたほかほかのコーヒーの匂いも、
ジャケットからほんのり香った柔軟剤の匂いも。
頬に触れた丸っこい指も
腫れちゃうんじゃないかってくらい触れ合った唇も
逃れようとする私を何度も捕まえた舌先も
爪痕をつけた白い肌も
五感それぞれに、これでもかというくらい鮮明に刻みつけられている。
…あの人は誰
「ああああああああああああああああああ」
ｰｰｰｰｰ割れそう、頭が。
･
･
･
シトシト、シトシト、雨が降る。
真実を隠すように、雨が降る。
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