BLACK JACK【0617*K.N】 (ページ2)

今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:372,885 hit

-1- ページ2

渡り廊下を通って、その名の通りキャンパスの真ん中に位置する中央棟に向かう。

風に運ばれる細かい雨粒が、髪から足元に至るまで、じっとりと湿らせていく。

濡れてもいいように、と選んだ半端丈のパンツと、ペタンコのレインシューズ。

……髪、ポニーテールにしておいて良かった。

ハンドタオルで顔を抑えながらエレベーターに乗り込むと、6階のボタンを押した。

年季の入ったエレベーターがガタン、と音を立てて私を目的地に運ぶ。

「はぁ……」

先生にも言われるんだろな。まだ決められないの、と。

優柔不断は昔からだ。
石橋を叩いて叩いて、叩きまくっても渡らないこともあるってくらい。

失敗することが嫌で。
傷つくことが嫌で。

そうして出来上がったのが、この平凡で何の面白みもない私だ。

別にいい。

希望していた企業にも内定をもらえた。
単位だってもう何とかなる。
友達だっているし、家族だって両親健在。

私は私の毎日に満足している。

ｰｰｰｰｰあとは

「卒論……何とかしなきゃ」

ガタン、と再び音を立ててエレベーターは止まる。

先生の研究室を目指して、私は歩き出した。