朝を憂う【ONEPIECE】 (ページ8)

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ゞページ8

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「ンまぁ〜…!!」

　口いっぱいに広がるベリーの酸味とバニラアイスの優しい甘さ。長時間歩いて火照った体に染み渡る冷気を堪能しつつ、久しぶりの甘味に頬が緩む。ここまで自由な時間を過ごしたのはいつぶりだろう。胸の内からむくむくと湧き上がってくるものはきっと幸福だ。

　たっぷりサイズのパフェをぺろりと平らげご機嫌に紅茶を啜っていれば、突如テーブルに影が落ちた。船員か？と視線を上げると、そこにあるのは見知らぬ男の顔だった。いかにも軽薄そうな格好に眉を寄せるが、男は気にせず喋りかけてくる。

「お姉さん一人？俺と遊ぼうよ、楽しいよ」
「……雑なセリフ。もっと腕を磨いてきなさい」
「え〜めっちゃ辛辣〜。照れてないでさあ」

　むむ、と顔を顰めるけれど、引き下がる様子は一向に見せない。どうしたものか。

　その時、ドンと衝撃が響き渡った。倒壊音や悲鳴も聞こえる。目を向ければ数百メートル先に煙が上がっている。トラブルか、と周囲の客が騷ついた。

「……私、行かないと」
「えっ？」
「お望み通り甘えるわね。支払いよろしく」

　困惑する男を放って駆け出した。

　──煙に混じる僅かな砂を見付ける事ができたのは、人並みより優れた私の動体視力だけが理由じゃない。恐らくわざと発生させたのであろう煙は黒かった。相手が炎使いなのか何なのか分からないけれど、あの聡い男はそれを利用して、立ち上る煙に砂を混ぜることで私へ位置を知らせたのだ。

　腹立たしい事この上なかった。あんまりにも雑で不明確な呼出しだ。もし気付かなかったらどうするつもりなのだろうか。……それとも、私がそんなヘマをするわけはない、と？

「ムカつくわね……!!」

　私にあるのは殺しだけだ。誰かを守るなんて仕事は未経験だし、一人で自由に動ける時間を貰ったのも随分久しぶりで、──こんなにも胸が高鳴るのも、初めてのことなのだ。わけは知らない。