朝を憂う【ONEPIECE】 (ページ15)

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焼べられた薪を灰にしてページ15

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　彼らとの旅もとうとう二月目を迎え、仕事や船旅にすっかり慣れてきた頃のこと。到着した小さな島で物資の補給と情報集めを終えた私は、同じく諸用で出ていたサーと船に戻っている所だった。
　上陸した日から雨が続いていたためか、彼の機嫌は頗(すこぶ)る悪い。眉間に刻まれた皺の深さに、こんな姿を見るのも何度目だろうと笑いを零す。

「夜はどうしますか、ミスター。美味しいと評判のフレンチがあるそうですが」
「お前が作れ。出るのも面倒だ」
「御意」
「鬱陶しい喋り方をするんじゃねェ」
「はァい」

　──彼にそこらの店より良いとまで言わしめた私の料理はレパートリーを更に増やし、外に出る必要のない日はこうして所望されるまでとなった。苦言も減った。コーヒーに関してはまだ言われるが。

「明朝立つ。用は済んだか」
「ええ。随分急くのね、何か予定でも？」
「いや、……」

　言い淀む彼に首を傾げる。いつの間にか小降りだった雨はザアザアと音を立てていて、静かな街を霧と共に覆っている。眉を寄せ、不思議な表情で立ち止まるサーにもう一度声を掛けようと口を開いた──その瞬間。

　パン、と響いた破裂音。目を見開く彼に傷が無いことを確認し、遅れて感じた痛みに顔を顰める。被弾した右肩から、ドロリと血の流れる感触がする。音の発生源、背後数十メートル先先の建物屋上を見詰めれば薄く光るものが見えた。銃口だろう。狙撃手なら仲間がいる可能性も高い。

　ホルスターから拳銃を引き抜き、瞼を下ろす。潜るように気配を探る。──音の違和感を聴き当てる。

　狙撃手に向け二度発砲、次いで左手にある路地に三度発砲。跳弾と動いた気配から位置を見極め距離を詰める。拳銃をナイフに持ち替えて、奥にいたもう一人と友に素早く処理する。
　路地を駆け抜け狙撃手のいた建物に移り、その場にいた一人を始末。……しかしライフルは二丁設置されており、真新しい血痕も残っていた。発砲者は一早く逃げ出したらしい。

　追えないことは無いけれど、撃たれた右肩がやたら痛む。もしかしたら毒でも入っていたのかもしれない。そもそも今は雨天だ。思い通りに動く事の出来ないサーを放って人数不明の敵を追うのは、やや厳しい。

「ごめんなさい、一人逃がした」
「相手は」
「賞金稼ぎか雇われの殺し屋。数日は気を張っていた方がいいわ……狙撃手はかなり腕の立つ人よ」

　傷口から、僅かに痺れが広がっていた。