朝を憂う【ONEPIECE】 (ページ14)

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ゞページ14

*

「……」
「ワノ国の伝統料理です」
「知っている。俺が聞きてェのはこの量だ、本当に一人分か？」
「勿論。見た目ほど多くありませんよ」

　汁物、煮物、魚に小鉢、炊き立てのお米。フルコースのような品揃えを一つの盆に全て乗せたもの。バランスや色味を考えてこれらを作るのは、中々骨が折れた。

　念の為ダズさんにも味見がてら同じ物を同じ量食べて頂いたのだが、あっという間にペロリと全て平らげていた。

　「……旨いのは確かだ」という間の空いた感想には首を傾げたけれど、問い質しても教えてくれず、しかしボスも気に入るだろうと頷くので、結局私は一抹の不安を抱いたまま彼の前に立っている。

　日頃散々文句を言うサーだけれど、「不味い」と零したことは一度もない。その事についてはダズも否定しなかった。少なくともコックでもない人間の料理に手を付ける時点で十分珍しい事なのだとか。期待通り、訝しげな顔をしつつも彼は椀に手を伸ばした。

　…無言。

「……得意なだけあるな」

　ふ、と。可笑しそうに、愉快そうに少しだけ上げられた口角は、今までの批評を思うととてもとても嬉しいものである。悪くない、という声は相変わらず冷たいが。

「徹夜した甲斐があったわ」
「何くだらねェ事してやがる」
「あなたが色々言うからじゃない……」

　スッキリした。恐らく今後も口を出される事に変わりは無いのだろうが、それでもこの一度があっただけ遥かにマシである。もはや私が気に食わないから文句を言っているのかとさえ考えていたので。

「はー……明日のランチのご希望は？」
「パンでいい」
「はいはい」
「エピは多めに焼いておけ」
「…バゲットじゃなくて？」
「あァ？てめェが勧めたんだろうが」

『オススメならエピとマフィンよ』

「……あなたって」
本当に、何を考えているのか分からない。

　──ワノ国料理を気に入ったらしい彼からしょっちゅうリクエストを出されるようになるのに、そう時間はかからなかった。ダズさんのあの不思議な顔は、「ああこれボス気に入るだろうな」という先読みから来るものだったらしい。

　批評の数は日々減っている。私はまだやれる。焼き立ての甘いマフィンを頬張りながら、新しい本に手を伸ばした。