朝を憂う【ONEPIECE】 (ページ13)

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　突然だが。殺しを生業とする私の唯一の趣味は料理だ。仕事の合間に勉強と練習を重ねていたら、いつしかフルコースさえ完璧に作れるようになっていた。お菓子作りもそこそこに、訪れた先の伝統料理まで──幅広く手を出したお陰で腕はかなりの物だと自負している。
　そんな私が最近味わった一つの挫折。というより苦悩。というよりショック。それは、雇い主であるサーにほとんど満足して貰えないこと。

　味が薄いだの食べ合わせが微妙だの、それはもう多種多様なお言葉が降ってくる。コーヒー一つとってもそうだ。もはや私の問題なのか彼の拘りが強いのか分からなくなってきた。取り柄だと思っていたのに、完全に打ちのめされてしまっている……。

「65」
「今日は何」
「濃い。挽き方が雑だ」
「アー……」

　前回は抽出時間が長すぎる、だった。よくもまあこれほど拘れるものと笑い飛ばしてやりたくなるが、味は味。一応家事の腕も見込まれた上で雇われているのだから無碍にはできない。それにここまで言われると、流石の私にも意地が出てくる。

「絶対に美味いと言わせてやるわ……!!!」

　──こうして私の特訓期間が始まった。

　彼の好物はワニ肉だが、あれは調理が難しいので却下。素直に自分の得意なもので攻めることとする─ワノ国の料理。あの独特な味付けが大好きで、本に残っている数少ないレシピは全部覚えていた。具材は前回立寄った島で調達済みなので、あとは実践あるのみだ。

　意外と濃い味を好むこと、美味しければ珍しい物も口にすることなど彼の趣向を加味した上で、最も上手く作ることが出来るメニューとすればかなり限られる。…その中で、私が選んだのは。