朝を憂う【ONEPIECE】 (ページ12)

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　その日から、彼は島に寄る度様々な本を私へ与えた。以前購入し部屋に積もっていたものは一週間で読み切ったので、残したいものを除いて売るようにしている。

　航海、建築、料理、歴史、時には極々普通の文学まで。彼が持ってくる本は分かりやすく情報量の多いものばかりだから、飽きることなく読むことができる。それが彼なりの配慮なのか、それとも単に彼のセンスがいいだけなのか、その辺りは図り兼ねるけれど。

　能力者を相手にした場合の戦闘法も、ダズさんを相手に教わっている。時にはサー自ら相手をしてくれることもあって、これが案外楽しいのだ。

　彼は強い。それでいて賢く狡猾で、敵の力量を見極める目も持っている。そんな男との模擬戦から得られるものは数多く、自分の未熟さを痛感させられた。それはダズさんを相手にしている時も同じだった。

「アンタは体の動かし方が投げやりすぎる。もっと筋力を付けるべきだ」
「……私、これでも一応界隈では名の通った殺し屋なんだけど……腕が鈍ったかしら」
「考え方のせいだろう。怪我を恐れない度胸は悪くないが、手放しに褒められたものでもない」
「……そう、ね。気を付ける。もう一戦いい？」
「ああ」

　勝率は4割ほど。任務の大半が暗殺である以上仕方の無いことだとは思うけれど、対能力者の正面勝負はまだ不慣れだ。もっと強くならなければいけない。与えられた仕事をこなせなければ、私に存在価値は無いのだ。

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「マリアは医学の知識があったと言っていたな。どの程度だ」
「内臓破裂した子供を手術できるくらい」
「その子供に後遺症は」
「傷跡以外ほとんど無し。元々医師を目指してたみたいよ」
「……何がどうなりゃそこからイカれた殺し屋になる」
「恋した男に捨てられたら？」
「くだらねェな」
「本当にね」

　しかしお陰で、私にも少しだけ医療の心得がある。これは私がマリアから貰った三つのうちの一つだった。残り二つは殺意と殺し方。まあ知っておいて損は無いものなので一応感謝している。

「オペオペの実なんてあるのね。チユチユ……この辺りを私が食べていればもっと役に立てたかしら」
「てめェを雇ったのは自衛能力のある非能力者だからだ。忘れたか」
「そうだった。……あなた、海に落ちることなんてないじゃない」
「いざと言う時は誰にでもある」
「用心深いのね」
「使える手駒は多い方がいいからな」