10話 君が可愛くて ページ10
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「は…っ、はっ……ぅ」
「うむ!やはり、君の剣技は流麗だな!体力がそれに追いつけば、更に強くなれる!目標は柱だ!」
「あ、ありがとうござ、います……」
とんでもない男だ。これだけ動いておいて息一つ乱れていない。おまけに笑っている。怪我が回復したばかりの相手に対して、厳しすぎではないだろうか。
噂には聞いていたが、継子がすぐ逃げるというのも頷ける。そりゃそうだ。こんなの嫌だわ。
水を差し出され、一気に飲み干した。いい飲みっぷりだ!と頭を撫でられた。
煉獄さん、頭撫でるの好きだな。
兄弟でもいるのだろうか。
すたすたと彼は縁側に歩いていき、腰を下ろした。ぽんと膝の上を叩いて、手招きされる。
「こっちにおいで」
「はい、……ん?」
今この人、膝の上を叩かなかったか?膝の?
困惑で
普通、横かどこか別の場所だろう。膝の上に座れとでも言いたいのか。上官命令なのか。逆らえば階級を落とされでもするのだろうか。思考がぐるぐると回る。
考えても仕方がない。やれ。
ぐっ、と覚悟を決めて、煉獄さんの方に歩み寄り、そろりと、膝の上に座る。固く拳を握り、うるさい鼓動を抑えようと息を止めた。煉獄さんは何も言わない。
「……」
「……」
おもむろに、煉獄さんが口を開く。
「ど、どうして膝の上に座っているんだ、A」
「いやあなたが言ったんでしょうが!!!膝!!」
勢いよく振り向くと、煉獄さんは耳まで顔を赤くしていた。それを見て、へ、と言葉尻の力が抜ける。
同時に、腰から背中下部にかけて、なにか、ゴリ、とした硬い感触のものが…当たって、いる。
「え、これって」
「すまないA。離れてくれないだろうか」
やけに静かな低い声で呟かれた。額には青筋が浮いている。当たっているものが何なのか、悟った瞬間、それこそ疾風のような速さで飛び退いて、離れた。
煉獄さんは、だらだらと汗をかいている。稽古の後ですらほとんどかいていなかったのに。
「煉獄さん、訴えますよ」
「不甲斐ない。すまない、君が可愛くて」
くるりと背を向けられ、ふーっ、と息を吐いている
煉獄さん。今、とんでもない爆弾発言を、しなかっただろうか。可愛いと言ったのか。
熱くなりかけた顔を誤魔化すように、慌てて叫ぶ。
「とりあえず早く治めてください!!」
「善処する!!!」
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時