9話 ページ9
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そっと横抱きの状態から下ろされる。
男性にこのようなことをされるのは初めてだ。心臓がうるさくて死ぬかと思った。顔が近いんだこの野郎。
「どうして急に稽古なんて思いついたんですか」
「…うむ。これからのことを考えても、お互いの癖や呼吸を合わせるため、戦いの前にこうして剣を合わせるのが得策ではないかと思った故だ」
「なるほど?」
先日は堂々と話していた彼が、珍しく少し目を泳がせている。どうしたのだろうか。
「煉獄さ、」
「さあ木刀を持て!俺は待たないぞ!!」
声を掛けようとしたら、既に稽古は始まっていたらしい。慌てて距離を取り、木刀を構える。
煉獄さんが地を蹴った。来る!
身構えた瞬間、目で捕える暇もなく、恐ろしい速さで打ち込まれた。木刀でなんとか受けたが、木刀を持つ手から、身体中に振動が伝わる。
力では敵わない。いなせ。風のように障害物は躱せ!
ふんっ、と腰に力を込め、木刀の側面で受けきった。
そのまま幾度も打ち込まれ、その度にぎりぎりで受け流す。力が、精度が、格が違う。おそらく手加減して貰っているのに、まるで反撃できない。
飛び上がり、空中で姿勢を整える。
「風の呼吸、伍ノ型」
ーーーーー
空中から、地上への広範囲の攻撃。これは竜巻だ。
躱せたとしても、剣さばきで起こった風が、相手の体勢を崩す。いけるか。
「なるほど!!ーーー炎の呼吸、肆ノ型」
ーーーーー盛炎のうねり!!!
「なっ…!!」
斬撃が、全て防御された。あれでは風も届かない。
このまま距離を詰めるとまずい!上半身の体を捻る。
が、速度が落とせない。
「ぶつかる…っ!!!」
煉獄さんが、ぐっと下半身に力を込めている。
体当たりするつもりか!!!酷い!!!
これ以上体勢は変えられない。冷や汗が垂れる。
木刀同士がぶつかった。凄まじい速度で押される。
「ーーーぐっ…!!」
体当たりで吹っ飛ばされる。
受身が取れなかった。
まずい。このままだと壁に激突する。
衝撃を予想し、目を瞑った。
痛みは、来なかった。
はっと目を開けると、私は煉獄さんに抱えられていた。視線が合って、びくりと肩が震える。
「痛みはないか!」
「だ、大丈夫です」
「よかった!では続けるぞ!」
「ひえ」
そのまま、稽古は三時間続いた。
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時