8話 ページ8
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昼下がり、私は全力で走って逃げていた。蝶屋敷の屋根の上を跳ねながら、思い切り叫ぶ。
「なんでまたあなたがここにいるんですか!」
「ああ!!また君と任務に就くのでな!!」
「今追いかけなくてよくないですか!?」
あっけなく肩を掴まれ、拘束されてしまう。
ぼふんと煉獄さんに倒れ込み、彼の腕が体に回されているのに気がついて、ぴしりと固まって、回し蹴りを食らわそうと体を捻る。
ひゅんと飛んでくる私の足。煉獄さんは笑顔で頭を斜めに倒し、見事に避ける。
「いい蹴りだ!!」
「避けたくせになんですか!」
「ははは!それにしてもA!今日はなんだか元気がいいな!良いことでもあったのか!!」
再び固まる体。
あの日、煉獄さんに言葉をかけられてから、少し心が軽くなった節がある。
初めは、てっきり苦手で、もう関わりたくない種類の人間だと思っていた。
けれど、手を振り払ったり、突き放すようなことを言ったりしたことを申し訳なく思うくらいには、温かい気持ちで彼を認識できるようになっていた。
今日こうして訪ねてきた彼を見たときも、嫌がる素振りはしたけれど、心中はそこまででもない。
「…別にないです」
「そうか!本題だが、今日は君に稽古をつけようと思って来た次第だ。腕の怪我はもう平気か?」
そう言って、眉を下げて心配そうに腕の傷を見る。もう大丈夫です、と伝えると、ふわりと彼は笑った。
うーん。騒がしい人なのか、静かな人なのか、よくわからない。いや、ほとんどは騒がしいんだろうけど。
「炎柱様、よろしくお願いします」
「俺の名前は煉獄杏寿郎だ!!」
「いや、さすがに覚えてますけど」
「ではそう呼んでくれ!!」
彼は、上官命令だ!!と言って目を見開いた。
そう言われると拒否ができない。腐っても相手は柱。
「煉獄さん、今日はよろしくお願いします」
「うむ!!」
煉獄さんは力強く頷いて、満足気に目を細めた。
またもや、ぽむちぽむちと頭を撫でられる。
眉間に皺を寄せながらなでなでに耐えていると、煉獄さんは、その容姿に似つかわしくない表情だな!と一層笑った。
飛び蹴りをお見舞いしようと思ったが、空中で横抱きにされて庭へ連れていかれた。解せぬ。
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時