7話 天賦の才 ページ7
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「どうだったかい、Aとの任務は」
鬼殺隊本部。
煉獄は今回の
彼女の超人的な記憶力は、鬼殺に関して言えば、非常に役に立った。生まれ持ったその才能は、彼女が今まで生き残ってこれたことを、大いに助けた。
しかし如何せん、その天賦の才は、彼女の心のほうを傷つけた。
彼女は、御館様のように、今まで共に出陣した隊士のことを、全て覚えている。名前に限らず、生い立ち、彼らとの会話に至るまで、全て。
しかし御館様と違う点は、彼女が共に戦い、彼らが死ぬ場面を直接見ているということである。それは深く彼女の心に、深く刻み込まれる傷となっていった。
次第に彼女は、誰かと共に任務に赴くことを拒否するようになった。
『Aは最近、もっぱら単独任務しか受けなくなっていてね。もちろん、それに見合う強さを、彼女は身につけている。
しかし、一人でしか戦えないというのは、これから大きな壁となるだろう。
杏寿郎、君なら、Aの心にある傷を、和らげてくれると信じているよ』
そういう訳で、煉獄は彼女との共同任務を任されたのである。
柱ならば、死ぬ可能性は大幅に下がる。煉獄杏寿郎の人間性も踏まえて、産屋敷は彼を斡旋した。
「
しかしその反面、彼女の記憶力は、確かに彼女が本来の力を発揮することを阻んでいる。自分なりに、彼女に言葉はかけましたが、本当に救うことができたかは…」
煉獄は彼女を見たとき、風が心に吹き抜けるのを感じた。
腰まである艶やかな黒髪を揺らしながら、旋風を巻き起こして剣を振る様子は、さながら風の精であった。
まだ力不足であることには違いないが、きっと彼女は柱になれる。その実力がある。
御館様は煉獄の言葉を聞き、ふ、と笑みを浮かべて頷いた。
「その様子なら、きっと大丈夫だと私は思うよ。杏寿郎は、どうやらAの強さだけに惹かれたのではないようだね」
煉獄は、御館様が何を言わんとしているのか理解ができず、首を傾げた。まだ、自分の心に芽生え始めている感情に気がついていなかった。
「杏寿郎、君にはこれからも彼女を頼みたい。受けてくれるかな」
「御意」
ばさりと羽織をなびかせて、煉獄は邸を出た。
再び彼女に会えることに、胸を踊らせながら。
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時