39話 ページ39
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また一つ、声が響いた。と同時に、何かが刺さる生々しい音。汗が一筋、額から垂れた。
「落ち着け」
息を吸え。ただ走れ。間に合わないなんて考えるな。
姿勢を低くして、足に酸素をこめる。
そして数秒の後、辿り着いた場所にあったのは、
無惨に横たわる隊士たちの姿だった。
首と体が半寸程しか繋がっていない者。
刀が背中から貫通し口から飛び出ている者。
腕がもげて自分の刀が胴体に刺さっている者。
その中には、知っている顔もあった。
「……あ、ぁ、」
視界が暗くなった。絶望で手がだらりと垂れた。
つい先日、笑いあった仲間が死ぬのはよくある話。
…よくある、話。
『姉ちゃん!栗餡のまんじゅう美味しいねえ!』
『こら、一気に食べたらだめだよ』
膝を着いてしまった足を、だんっ、と立てる。拳を握りしめた。怒りで血が上った。俯いていた顔を上げ、涙がこぼれそうになる目を必死で凝らした。
一つに結われた髪が、はらりと揺れる。風が吹いた。
諦めるな。
まだ生きている者は、必ずいる。
風に吹かれて目を閉じる。先程よりもずっと、気配を強く感じる。風を感じろ。探せ。
多くの叫び声が聞こえる。
あちこちから漂う、血の匂い。そしてそれ以上の強い悪臭。鼻が歪みそうなほどの異臭だ、それ以外の感覚も麻痺しそうなくらいの。
「癸…、癸だって!?なんで柱じゃないんだ、癸なんてそんなの、何人いても一緒だ!意味が無い!」
聞こえた。生存者の声だ。
姿勢を低くして、シイィィ、と息を吸う。目を閉じて、片足を引いた。
そして、地を、蹴る。
周りの景色が轟速で過ぎてゆく。疲労は感じない。
見えた。
三人。まだ無事だ。
ずざざと速度を落として、三人の前に姿を現した。いきなりの登場に、三人とも体をびくつかせている。いや、一人変なやつがいるが。猪被っているけれども。
辺りを見ると、やはり糸に操られて斬り合いをしたらしい者たちがいた。彼らもずいぶん痛めつけられている。早く手当をしなければ、死ぬ。
柄に手をかけた。刀を抜き、彼らの背中に繋がれている糸を、空中に飛び、全員分を一太刀で斬る。
はらりと舞う糸と、離された彼らの体を抱きとめ、三人のもとに置く。息を呑んで私を見ていた。
「階級
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時