20話 煉獄ノ回想 ページ20
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振り返ると、鬼は驚きと状況が飲み込めていない顔で、目を見開いていた。
頸を斬られたと理解すると、途端に最後の足掻きをしだす。
「き、斬られた!?斬られたノ!?あなた、自分の大切な人もろとも殺すのネ!あァ、非道な人間!なんてこト!信じられないワ、お前なんて、」
最後まで言わせず、その目玉をぐさりと突き刺す。
ぐっ、と喉を詰まらせた鬼を一瞥して、できる限りの冷めた表情で答えた。
「お前は一つ失言をした。私を見ている限り、斬れない。そう言ったな、あれは俺を殺したいなら言うべきではなかった。つまり、目を閉じていれば、お前はお前のまま。非道なのはどちらか。地獄でよく考えろ」
「な…っ、あれで術をかいくぐったというノ!?たったあの一言でお前ガ!?」
「そうだ。さあ、さっさと消えろ。
Aの命を握った罪を、永遠に贖い続けるんだな」
はらり。鬼の体が、完全に塵となって消えていく。その瞬間、力が抜け、がくりと地に膝を着く。
失血で、少々頭がぼんやりとした。甘い匂いは消えていた。
右腕と左足は折れているな。おそらく頭も切れた。
鬼自体の力量は雑魚鬼と変わらない。厄介な血鬼術。ここまで苦戦を強いられるとは。
その者が見ている人物と、生死を繋ぐ血鬼術。
ああ、本当に、腹が立つ。
あれとAの命が繋がっているとわかった時、
一瞬、この鬼は倒せないのではないかと考えた。
俺は、あれの頸を斬れないと、思った。
「A、君のせいだな。はは」
ぐらりと体が揺れる。手を着いた。上で、鴉がカアアと鳴く。すまないな、君にも心配をかける。
Aに会えば、きっと彼女は、心配してくれるのだろう。泣いてしまうだろうか。あれ程人の傷や死に、人一倍敏感な彼女のことだ。もしかすると怒るかもしれない。
いけないとはわかっているが、
それが少し、嬉しく思えてしまう。
よもや。
俺は案外、ずるい男のようだ。
「ああ、…早く、君の怒る顔を、見たいな」
一人、呟く。
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時