17話 煉獄ノ回想 ページ17
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人混みをかき分け、鬼の気配を探りながら歩く。
やはり帝都は人が多い。こんな所に出没する鬼がいるとは、危険にも程がある。柱になったときの、あの鬼を思い出させるような。
Aにも早く帰ると言ったのだから、早々に終わらせなければ。
周囲に目を配りながら、伝達された区域を一通り回ったが、妙な空気ではあるものの、はっきりとは鬼の正体を掴めない。
「きゃああああ!!!」
どうしたものか、と立ち止まったとき、裏路地のほうから悲鳴が聞こえた。すぐさま振り返り、そこに入った。奥に動きが見える。
駆け寄ると、女性が一人倒れていた。
首から血を流している。
「そこの女性!!大丈夫か!!」
「きゅ、急に、変なものが、襲ってきて、私っ」
体が震えている。無理もない。恐らく相手は鬼。
見つけるまでもなかった。あちらから尻尾を掴ませるとは。ひとまず、女性の怪我を看ようと近づき、しゃがみ込んだ。
眼前に、爪。
頭を引いて躱す。その勢いのまま、後ろに一回転。
頭があった場所を、猛烈な速度で爪が切り裂く。
「…なるほど」
刀を抜き、女性だったモノに向き直った。
そうか、人の振りをし、街に紛れ込んで、こうして裏路地で人を喰っていたのか。なんという事だ。
「アラ、躱されちゃった。やァね、気づいたのネ、でももう遅いのヨ」
ケタケタと笑うそれ。口は裂け、鋭く長い爪をじゅるりと舐めている。先程の怯えていた様子は跡形もない。今目の前にいるのは、斬るべき鬼。
「そうやってこそこそと人を喰い殺している悪鬼!俺がお前を今!ここで骨まで焼き尽くし、斬る!!!」
刀を抜いた瞬間、鬼は、笑っているその口角を、更に裂けさせた。違和感が走る。
なんだ、この匂いは。
「あァ、吸っちゃっタ!先刻の私の血の匂イ!フフ!もうお前は私を殺せないワ!!あァ、可哀想ニ!!」
この甘い異臭。大方、判断力を鈍らせるか、その類のものだろう。ぐらりと視界が歪む。
しかし。
これ如きの血鬼術で、俺を止められるなどと思うとは。愚か。
呼吸で吸い込んだ空気の巡りを遅らせ、再び構える。
体に炎を纏った。
「炎の呼吸、壱ノ型」
ーーーーー不知火
一瞬で距離を詰める。切っ先が頸を捉えた。
鬼が、ニタリと嗤う。
「アラ、斬っちゃうノ」
そこに、刃の前にいたのは、鬼ではなかった。
どうして、今、ここにいるんだ。
A。
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時