念願の思いで付き合えた彼氏のジェイドをデートに誘ったらフロイドが来た話。

35話 ページ35

数十分後＿＿＿


「ごめん、待った！？」

A「い、いえ、全然待ってないです…」



駅で待つこと数十分、私に声をかけたフロイドの息は切れていて、まるでここまで必死に走ってきたようだ。





A「その、大丈夫ですか…？」

「え、あぁ、ごめん、走ってきちゃった」




あははは、と汗を流しながら笑うフロイドに苦笑いを浮かべ、持っていたハンカチで額を拭う。





A「ほんとにおかしな人、走ってくる必要ないでしょうに」

「え、うん、ごめん」




私にいいように汗を拭かれているフロイドに思わず笑ってしまう。

今のフロイドはやけに素直で、まるで借りてきた猫のようだ。









一通り汗を拭き終え、「じゃあ、行きましょう」と私が歩き出すと、フロイドからキュウと音が鳴るのが聞こえた。



その音はイルカがコミュニケーションをとる時に出すという音に似ている気がした。









A「あの、何か言いました？」

「え、俺なんか言った…？」

A「いえ、『キュウ』って音が聞こえた気がしたんで、人魚の言葉なのかなと」








私がそういうとフロイドは「マジか〜…」と顔を覆い隠す。

その様子を見て、何か不味いことを言ってしまったのだろうかと不安になる。









A「あの、私、何か不味いこと言いましたか…？」

「いや、ごめん、完全に無意識だった、忘れてください…」









「あ“〜」と顔を覆いながら声を発するフロイドに、相当やばい人魚語だったのだろうかと変に勘ぐってしまう。




しかし、慌てふためいているフロイドを見るに本当に忘れてほしいのだろう。


「わかりました、じゃぁ、行きましょうか」と映画館に向かった。

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