54[降谷side] ページ7
萩原と松田が俺らと入れ替わるように射的で騒いでいるのを見ていると、ふと視線を伊達の方に戻せばAにわたあめを渡していた。
ヒロを連れて二人の元へと近寄れば、初めてのわたあめに大分感動したように目を輝かせていた。普段飲んでいるときからは考えられないような、表情になんども驚かされる。
彼女の家庭状況は軽く聞いていた。
「...どうやってできてるんだろう」
小さく呟いたので、諸伏なんて「子供みたいだよな」と笑っていた。
「ザラメ糖だ。砂糖を瞬間的に冷やすとふわふわになるんだ、その原理を使って一気に熱した砂糖を高速で回っている穴から外に吹き出すと、一気に冷えて細い糸のようになる。それを巻きつけてるんだ」
そう説明すれば、彼女は感動したように「詳しいですね」と小さく笑いながらわたあめを口に含んだ。
「あれ、わたあめ食べてる」
「食べる？」
萩原へとわたあめを差し出せば、ありがとう、と嬉しそうにわたあめを摘まみ取っていた。松田は拒否したが、Aにより口へと無理やり入れられていた。
「そろそろ移動するか」
時計を確認し、人が多くなる前に花火の場所取に行くことにした。屋台が密集したこの場所を出る頃には、それぞれの手にはいくつかの食べ物がぶら下げられていた。
「よくこんなところ知ってたな」
少し人混みから離れた少し高くなっている石段へと腰を下ろす。周りは何にもない、ただの住宅街だった。案内してくれた萩原は、昔来たことあってね〜なんて言っていた。
「...相手は女だね」
Aの言葉に勢いよく振り返った萩原に、松田が「どの女と来たんだろうな」とつぶやく。
「なんでもいいだろ！！今年はこのメンバーで来たかったんだ！」
そう、今回この祭りに行きたいと言い出したのは萩原だった。途中からAも連れて行っていいか、と言われたのでもちろん俺らも拒否する理由もなくOKした。
「だって、卒業したらこのメンバーで祭りなんてくる事もないだろ」
少ししんみりした空気を出す萩原に、松田が吹いた。
「そりゃそうだ、警察官になってまで祭りだ騒ぐ男5人だなんて、気持ち悪りぃ」
顔を赤くしながらやいやいいう萩原に全員が笑った。
松田の横に座るAが、少し離れているとこにいるように見えて、笑っているのに、その目は寂しそうに見えたのは、なぜだろう。
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作者名：あおいろ | 作成日時：2020年1月2日 1時
