51[陣平side] ページ4
人の気配を感じて目を開けると、自分にピッタリとくっついて眠るAがいた。
半分開いているブラインドから見える景色からして、朝方だろう。時計を見れば、時刻は6時過ぎを指していた。慣れとは怖い、警察学校では毎朝6時半起床で身体も慣れてしまったらしい。
自身にくっつくAを抱きしめるように腕を回す。
俺が寝たのは日付を越した頃だが、その時にはまだ帰ってきていなかった。どうせまた明け方にでも帰ってきたのだろう。
だいぶ伸びたサラサラの髪の毛を軽く梳かすように頭を撫でる。
それと同時に髪から香る少し高いと言っていたシャンプーの香りと、微かに残る硝煙の香り。
「...」
何をしているかなんて聞かないが、何をしているかなんて察しはつく。
これを黙っている俺も、警察になるものとしては馬鹿野郎だな、なんて思うが、これが惚れた弱みというやつなのだろうか。
「...ん？」
こいつ、熱くねえか...
梅雨の時期、毎年体調を崩しているのを思い出す。
静かに額へと手を伸ばして手を当てれば、ジワリと伝わる熱。
「...んぅ」
少し唸りながら俺に強く抱きつくA。
体温計を取りに行きたいが、このままでは取りに行けない。
「...もう一眠りしてからにすっか」
こいつが熱出すのも今回が初めてじゃねぇし、と心の中で思いながらもう一度瞼を閉じた。
もう一度目を覚ました時、時計の針は１０を指していた。
横を見れば、だいぶ寝苦しそうに少し唸っているAがいた。
「おい、A」
肩を叩いて反応を見るが、それよりも顔がだいぶ赤い方が気になった。
すぐに布団から出て体温計と熱さまシートと飲み物を持ち、寝室へと戻る。布団を少しどかし、パジャマのボタンを3つほど開けて体温計を指す。
慣れたもんだな、と我ながら思う。
ピピピとなった電子音に、体温計を取り出すと、それと同時にAも目が覚めたようだった。
「...ん〜」
唸るように手を伸ばすもんで、俺はその手を掴んで「はよ」と声をかけた。
体温計に表示されたのは38.7と大分高い。しばらく手を握ってやれば落ち着いたようだったので、熱さまシートを取り出して額に貼る。
それに驚いたように「...ヤダってゆった...」と顔をしかめながら寝言のようにいう。
言われてねぇけどな...
こりゃ重症だ、と思いながらもう一度隣へと寝転んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおいろ | 作成日時：2020年1月2日 1時
