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「あれ、また傷増えちゃったの??」

その言葉に横に座っていた陣平先輩が私の腕を見る。ちゃらんぽらんに見えるけど、研二先輩って鋭いって言うかなんて言うか...、よく人のことを見てるんだよなぁって思う。

二人には、習い事を始めた、とだけ伝えてある。

よく怪我が増えることから、体術系だとは思ってるみたいだけど。

「うん、私が下手くそだから仕方がないんだけどね...」

最初の頃にできていた痣や傷は、よく心配して傷薬を塗ったり湿布を貼ったりしてくれたんだけど、今の体はそれどころじゃなくてもう見せれるほど綺麗じゃなくなった。

「...本当に続けるの??」
「...うん」

心配そうに覗き込んでくる研二先輩は、「そっか」と悲しそうに笑うと私の頭を撫でてくれた。

「でも、女の子なんだから気をつけないと...」

私を過保護に心配してくる研二先輩とは対照的に、陣平先輩は缶ビール片手に難しそうな顔をしていた。

「...っ、おい」
「....ゴクッ、何??悪い??」

私は彼の手にあった缶ビールを素早く奪い取ると、そのまま3口程飲んだ。

「なんで、陣平先輩がそんな顔するの??」
「...そりゃ...」

私はもう一口飲むと、缶ビールを返した。

「...私は陣平先輩には笑っててほしい。ムカつくけど、バカだなって頭殴ってくるくらいが丁度いい。そうじゃないと...」
「...わり」
「いや、うん。二人がいるから今私はここにいるんだって、思うから、さ」

そういえば一瞬にシーンと空気が澄んだのがわかった。

「....Aちゃぁああん!!」

なぜか半泣きになりながら抱きついてきた研二先輩によりその空気はすぐに穏やかになった。

「おいバカ!!!溢れるだろ!!」

ソファーの横に座っていた陣平先輩は、その振動により溢れそうになったビールを急いで机の上に置いた。

「いいんだよ、たくさんおれたちに甘えてよ。それが俺たちの出来るお仕事だからね??迷惑なんて思ってないから、むしろ甘えてくれない方が悲しいかも...」
「...ごめんね、何もいえなくて」
「大丈夫だよ、ね??」

研二先輩は、こうやってちゃんと口に出してくれる。その言葉に救われる。

「もーらい!!」
「おいだからそれ俺の!!」
「てか、未成年だからやめましょう」

スッと伸びてきた手を交わして一気に飲む。

「てか、お前今まで飲んだことあるだろその飲みっぷり」
「さて、なんのことやら」

この空気が、私は大好きだ。

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作者名:あおいろ | 作成日時:2019年11月17日 1時

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