もしものおはなし。【d!】 (ページ16)

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rbr「ええんやな？まあ悪くてももう絶対離さんわ。後悔しても知らん。だってあんさんが決めたことやもんな。

そういえば名前、聞いてなかった。俺はロボロ。」

『私は…A』

本当に名前を教えていいのか、教えてしまったら本当におしまいなんじゃないか、なんて一瞬考えたけどよくよく考えてみれば私はもう助からない。ここから這い上がることは出来ない。この化け物もといロボロの元へと落ちていく他に道はないことを忘れかけていた。

もしかしたらロボロに殺されるんじゃないかって思うけどそれでも死ぬ最後の一瞬まで誰かに愛して貰えるならそれでいいかな。

rbr「A…A…名前まで可愛ええなんてほんまずるいわ。ああ、もう我慢できひん。A、こっち向いて」

少しだけ逸らしていた視線をロボロの瞳と交わらせるとちゅ、と唇に人肌程度の心地の良い熱が触れる。キスされたんだって分かるまで少し時間がかかってようやく私が理解した時にロボロはまたキスを落とした。
キスなんていつぶりだろう。ここに来てから、いやそのずっと前からしてなかったから随分久しぶりのような気がする。キスってこんなに暖かかったっけ、なんて呑気に考える。

ぼーっとしてた私を見てロボロは何を思ったか、今度は口内に舌をねじ込んだ。考え事をしてあまりに無防備だった私の口はロボロをいとも容易く受入れてぐちゃぐちゃにされてしまった。ロボロの人間よりも長い舌が私の舌と絡まってそのまま食べられちゃいそう。

『ん、ぶ…っ！ぁ、っ！』

ぐちゃぐちゃと絡まり合う音とロボロの荒い鼻息と私の鼓動だけが聞こえる。なんて静かなんだろう。こんなに静かなのはいままで生きてきて初めてかもしれない。外にいるはずの職員の声も小さな物音さえも聞こえない。聞こえるのはロボロと私の音だけ。とても幸せな気がする。

さっき初めて話したばかりの化け物のはずのロボロがこんなにも愛おしく思えてくるなんて不思議なような気もするけど必然とも思える。もしかしたらこうなるのは運命だったのかもしれない。だとしたらなんて残酷で幸せな運命なんだろう。

いままで神様なんてこれっぽっちも信じたこと無かったのに、人を殺した犯罪者である私にも幸せを与えてくれる神様に感謝したい。

rbr「かお、まっか。可愛ええね…」

目を凝らすと目の前には顔を真っ赤にして私の頬を撫でる彼。なんて可愛いんだろう。私なんかよりずっとあなたの方が可愛い！