もしものおはなし。【d!】 (ページ15)

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箱の側面の扉の横に小さな、とても小さな穴が空いていてそこから例の化け物のものだろう瞳が私を見つめていた。それは桃色の綺麗な瞳だった。

化け物は噂話の通り恐ろしい叫び声をあげるはずだった。
ただ静かに私の方をみてにやりと笑った。

まって、見ちゃったから私死ぬの？今すぐ逃げれば助かる？でも噂だと殺すまで追いかけ続けるって…いやでも噂は嘘かもしれない。さっきだって私が化け物の瞳を見たのに叫ばなかったし！

そんなことを考えているうちに、誰が開けたのかいつの間にか箱の扉が静かに開いてあっという間に私は箱の中に吸い込まれた。

中には何も無くて開いたばかりの扉から差す明かり以外に光源はなさそう。これが閉じてしまえば本当に真っ暗になる。

目の前で扉がゆっくりと閉まっていく、急いで扉から出ようとしたが中にいる何かに左腕を掴まれた。
力が強くて振り払おうにもビクともしない。

扉からの私の希望の光が細くなってそのまま消えてしまった。

ジリリリリリリ…とけたたましいサイレンが箱の外で人類の危機になるかもしれないこの事件を知らせている。はやく誰か助けに来て欲しい。いずれ死ぬ運命でもまだ死にたくない！

rbr「んふふ、やっと2人っきりになれたわ」

誰かの声、いや化け物の声が狭い箱に響く。

rbr「俺、ずっと待ってたんやで。ずっと前からあんさんのことが好きで…。声、可愛くて好きになって、4回も会いに来てくれたら今回こそはってずっと待ってたんや。
あは、やっと二人っきりやなァ…」

何も見えないはずの暗闇の中でさっき見たばかりの桃色の瞳がギラギラと光っている。それはまるで情欲に溺れた人間みたいで、あたかもこの化け物が人間だって主張してるみたい。化け物のくせに。

rbr「ここなら誰も…邪魔するようなやつおらんから2人っきりでずっと一緒に生きていこうや。」

先程までうるさかった外のサイレンが鳴り止んだ。
財団は私を捨てることにしたらしい。もう救出は期待できないと思う。ということは本当にこの化け物と？

考えるだけで吐き気がするような、気持ちの悪い嫌な未来。それでも他のSCPに無惨に殺されてしまうより、いずれ私の犯した罪の裁きを受けて死ぬよりずっといい提案だと思った。

rbr「どお？ええやろ。ほら、もうだあれも助けになんて来ない。俺と沢山愛し合って幸せになった方がええと思わん？」

近づいてくる化け物の瞳。
真っ暗で何も見えないから手探りで彼の体を抱きしめた。