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*2* ページ44


 そう千夏が言い放つと、葉佑は、気まずそうな苦笑いをして、コーヒーを啜った。
 そんな葉佑の様子に辟易(へきえき)とした千夏が、フンと鼻を鳴らした。

「千夏ちゃん、美人が台無しだよ」
「うっさいだまれこの(じじい)が」
「千夏ちゃん冷たい……」

 そうしおしおとして悲しげな様子の父親を千夏はごみでも見るような目で見ていた。
 
「わかった、わかった、話すから……。千夏ちゃん……許して?」
「解ったからさっさと話して」

 しかし、葉佑はなかなか話し出そうとしない。沈黙のみが喫茶店の中をぐるぐると渦巻いていた。

「本当は千春さんは……濡女を倒せるはずだったんだ」

「そう」

 酷く千夏の声が誰も知らない、他人、いや人間でもない、例えばインコとかが言ったような奇妙に上ずった声であったことを俺は覚えている。

「だけど……倒さなかった……いや、倒せなかった」

「なんで?」千冬が不思議そうに聞いた。「だって、千春はとっても腕がいい祓師だったじゃないの」

 そこで、言葉を切った千冬は、何かに気づいたように、素っ頓狂な声を上げた。

「そうか!千春さんは、倒せなかったんじゃない! 倒したくなかったんだ!」

「そうです。千冬さん。千春さんは倒したくなかったんです」

 葉佑の顔がうつむきげになった。

「何故なら……濡女は千春さんの妹でしたから……」

 この一言には驚くことはおろか、なにも身動きをとることが出来なかった。

 背中が薄ら寒く、氷水を入れられたような心地がした。じっとりと背中に汗が伝った。
 誰もが誰かが口火を切るのを待つ、遠慮の塊の様な時間が過ぎた。

ー42ー

*3*→←*第四章*明かされる秘密*


今日のラッキーキャラ

濡女 この子の正体は、作者しかわかってないんだ!(まだあやふやだけど)みんなも考えてみてね!


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たらら(プロフ) - いやー好評でなによりなにより。てかまじで律くん可愛い (2022年2月4日 16時) (レス) id: 553d11ea12 (このIDを非表示/違反報告)
月 夢(プロフ) - 空白時さん» おめでとうございます…! 続きも楽しみにしています…! (2022年2月4日 10時) (レス) id: 269ba6d569 (このIDを非表示/違反報告)
空白時 - 第一志望受かりました♪ (2022年2月4日 8時) (レス) @page43 id: d227187818 (このIDを非表示/違反報告)
空白時 - 探偵 コーヒー珈琲(珈琲百円)さん» ありがとうございます! 更新はもう少しお待ちください! (2021年12月29日 10時) (レス) id: 742d46997e (このIDを非表示/違反報告)
探偵 コーヒー珈琲(珈琲百円)(プロフ) - 更新、待ってまーす! (2021年12月28日 11時) (レス) @page1 id: db4e0d54c5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空白時 | 作成日時:2021年10月22日 11時

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