意外な一緒 ページ8
「ただいまー。かな。」
「お邪魔しまーす。」
少し塗装の剥げた扉を開けて、新しい我が家へと足を踏み入れる。
まだまだ生活感の欠片もないこの部屋は寒くはないが、ひんやりとしていて暗い。
「凄い、僕が一人暮らし始めた頃を思い出す。」
まだ物のない部屋に寂しさと孤独を感じた私は、河村さんが隣にいる事で安心を得る。
「なんだか寂しいですよね。荷物ありがとうございました。ちょっと整理しちゃいますね。何もないですが寛いでいてください。」
私はバッグの中から膝掛けを出して、それを畳んで座布団の代わりにする。
「あ、ごめんね。ありがとう。荷物はまだ届かないの？」
「そうですねえ。受け取りは夕方なので、まだまだ時間があると思います。」
今はお昼前なのでちゃんと大きな荷物が届いてゆっくりできるのはまだ先の話である。
「そっかそっか。だからその間に大学見に行こうと思ったのかあ。」
河村さんがちょこんと座りながら納得したような声を出す。
バッグの中の荷物をもともと家具として備え付けてある箪笥や戸棚の中にしまっていた私は、そんな河村さんの可愛らしい姿を見て、不覚にもほっこりとした。
「河村さん。」
「どうしたの。」
私が話しかけると、河村さんは綺麗な瞳を私に向ける。
「寒くないですか？」
私のこの質問に特に意味はない。少しだけ河村さんとの会話を楽しみたくて漏らした只の文字列。
「凄く快適です。」
それを知ってか知らずか河村さんはにっこり笑顔で言葉を返す。
「あっ。」
次の瞬間そのにっこりを崩して、河村さんは目を見開く。
「どうしましたか。」
何かまずいことでもあったのだろうか。
「この本凄く面白そう。」
河村さんは私の開いていたバッグから覗いた本に興味を示したらしい。
「面白いですよ。私その作者が好きでいっぱい持ってきたんです。」
「そうなの？実は僕も好きな作者なんだ。でもこれは読んだこと無いなあ。」
意外だ。好きな作家が一緒なんてなかなかない。
「良ければお貸ししましょうか？それはもう何回か読んでいるので。」
私がそう言うと、河村さんはとても嬉しそうな顔をする。
「良いの？」
「もちろんです。」
私が河村さんに手渡すと、とても大切そうに受け取り自身のリュックに仕舞う。
こんなに嬉しそうにしてくれるのなら貸す甲斐もある。
「本当にありがとう。」
さっきの可愛らしい笑みとは違う、でも優しい微笑みを浮かべて河村さんは言う。
きっとこの人は女性に放っておかれないのだろうな。
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とうふ(プロフ) - 白黒さん» お待たせしてしまって申し訳ありません！言葉を褒めて頂けて光栄です！本当にありがとうございます！ (2019年3月4日 22時) (
レス) id: be202b2e24 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 連載再開して嬉しいです……！とうふ様の言葉選び一つ一つが大好きです……！ (2019年3月4日 20時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
とうふ(プロフ) - 白黒さん» 初めまして！とても深くまで読んでくださってありがとうございます！私自身も河村さんを初めて見た時から惹かれたので、そういう風な書き方になっています！ (2019年1月1日 0時) (レス) id: 70e6922578 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 初めまして。河村さん推しなのでとても素敵な作品と出会えて幸せです…！ゆったりとした流れの中にところどころ一目惚れやそういうニュアンスに近いものが混ざっていてドキドキする感覚が大好きです。 (2018年12月31日 21時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とうふ | 作成日時：2018年12月30日 1時
