他愛もない約束 ページ6
「雛森さんは学部どこなの？」
暫く歩いていると、河村さんが尋ねてきた。
「文化三類です。文学部に入りたくて。」
「あ、なら川上と一緒かあ。」
突然出てきた聞き慣れない名前に困惑すると、河村さんが補足してくれる。
「僕の友達というか同僚というか、そんな感じです。」
素直に友達と言わないところを見ると何かしらの繋がりの中らしい。
「そうなんですね。河村さんの話から聞くに、凄く仲良しそうですね。」
「そうだね。確かに一緒に水族館行ったりしてるから仲良しと言えば仲良しかな。」
予想以上の仲良し加減に自然と笑みが零れる。きっと河村さん同様優しくて聡明な方なのだろう。
「あ、そろそろその荷物持つよ。疲れてきた頃でしょう。」
私がいろいろ考えていると、河村さんが手を伸ばして来た。
確かに腕が軋み始めた頃だけれど、流石に渡す訳にはいかない。たくさん詰め込んだこれは見た目よりも重いのだ。いくら男性とはいえ結構重さを感じるだろう。
「いえ、まだまだ行けます。」
私が親指を立てて余裕を表現すると、良いから良いから、と私の腕から荷物を取った。
「これはなかなか重いねえ。絶対大丈夫じゃなかったでしょ。こういう時はちゃんと頼って良い時なんだよ。」
河村さんが呆れたように、けれどもどこか面白がっているような声色で言う。
「ごめんなさい。ありがとうございます。」
これは後で菓子折りが必要だな。近くにお菓子屋さんはあっただろうかと脳内で地図を広げる。
「これって何入ってるの？聞いて良い？」
「あ、本とゲームと日用品です。」
河村さんは改めて手にある黒いバッグをまじまじと見る。
「ここに全部納めたの？どういう構造なんだろう。」
確かに普通に入れるのならば厳しいかもしれないが、詰め込み方にはコツがある。それをちょっと使えば一つのバッグに納めることは難しくない。何より大きな荷物は宅配便で送ったし。
「そんなに不思議な事じゃないんですよ。小さい物しか入ってないですし。」
「それなら後でコツを教えてもらいたいなあ。こういうの出来たら凄くお得だよね。」
なんて言うものだから、あ、今日っきりではなくて、私たちにもちゃんと後でがあるんだな。なんてどうしてか安心してしまった。
「もちろんです。ばっちりお教えしますね。お約束します。」
無駄に張り切って返事をしたからだろうか、河村さんがくつくつと笑う。
「はい。約束だね。」
私の新しい住まいに着くまでなのに、こんなにも平和な時間が流れる。
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とうふ(プロフ) - 白黒さん» お待たせしてしまって申し訳ありません！言葉を褒めて頂けて光栄です！本当にありがとうございます！ (2019年3月4日 22時) (
レス) id: be202b2e24 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 連載再開して嬉しいです……！とうふ様の言葉選び一つ一つが大好きです……！ (2019年3月4日 20時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
とうふ(プロフ) - 白黒さん» 初めまして！とても深くまで読んでくださってありがとうございます！私自身も河村さんを初めて見た時から惹かれたので、そういう風な書き方になっています！ (2019年1月1日 0時) (レス) id: 70e6922578 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 初めまして。河村さん推しなのでとても素敵な作品と出会えて幸せです…！ゆったりとした流れの中にところどころ一目惚れやそういうニュアンスに近いものが混ざっていてドキドキする感覚が大好きです。 (2018年12月31日 21時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とうふ | 作成日時：2018年12月30日 1時
