振り回し過ぎ ページ12
二人でテーブルを挟んで向かい合って座り、一つのメニューを分け合いながら見る。
「雛森さん好きな食べ物ってどういうのですか？」
「あ、私はうどんとか茶碗蒸しとかが好きです。」
私がそういうと、河村さんは少し笑った。
「凄い、健康だあ。修行してるみたい。」
これはもしや、からかわれているな。と察した私はお返しをするべく河村さんにも好きな食べ物を問う。多分こんなに細いのだから私とそんなに変わらないだろう。
「もう。そういう河村さんこそ何がお好きなんですか？」
「僕はカツ丼とかカレーとか好きだよ。」
私が得意げに聞いたのを知ってか知らずか、河村さんは予想だにしなかった事を返してくる。
「そんなに細いのに？」
驚いて素直な感情がつい零れ落ちてしまった。
「全く。男性にあんまりそういう事言っちゃ駄目だよ。中には鍛えてる人もいるし、男性はしっかりしてるって見られたいんだから。」
河村さんは少し拗ねたような表情をする。そんな顔を綺麗で絵になるものだから、私はなんだかくすくすと笑ってしまった。
「あー。人が折角教えてあげたのにそんな態度で良いんだ？」
「あ、ごめんなさい！」
今度は意地悪く笑った河村さんに心臓が跳ね上がって、背筋を伸ばして勢いよく許しを請う。
それがおかしかったのか河村さんは随分と笑ってしまった。私が河村さんの目の前でいくらむすくれてもお構い無しに河村さんは笑った。
「ごめんごめん。あんまり雛森さんが勢いよく謝るから。さあ、注文しちゃおうか。」
河村さんはひとしきり笑った後、メニューに目を落として、まだ拗ねてる私の頭を撫でた。
「ここはうどんも茶碗蒸しもあるよ。どっちも頼む？」
突然頭を撫でられたことで正常な判断を失った私は、河村さんの提案に頷いてしまった。
うどんと茶碗蒸しを両方食べられないほど私は小食ではない。むしろあと一品くらい食べられる。しかし、こんなに綺麗な人の前では少しくらい食べる量を抑えていいかっこしたいじゃないか。
「じゃあ僕はカツカレーで。すみませーん。」
訂正しようとしても悲しいかな先程撫でられた事があまりにも衝撃的過ぎて顔も上げられなければ声も発せない。
私は河村さんがうどんと茶碗蒸しとカツカレーを頼むのをただただ聞き終えて、奥さんが置いていった湯のみのお茶をゆっくりすすることしか出来なかった。
振り回されてばかりだなあ。
そしてある確信が私の中に湧いてくる。
河村さん絶対天然タラシだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とうふ(プロフ) - 白黒さん» お待たせしてしまって申し訳ありません！言葉を褒めて頂けて光栄です！本当にありがとうございます！ (2019年3月4日 22時) (
レス) id: be202b2e24 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 連載再開して嬉しいです……！とうふ様の言葉選び一つ一つが大好きです……！ (2019年3月4日 20時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
とうふ(プロフ) - 白黒さん» 初めまして！とても深くまで読んでくださってありがとうございます！私自身も河村さんを初めて見た時から惹かれたので、そういう風な書き方になっています！ (2019年1月1日 0時) (レス) id: 70e6922578 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 初めまして。河村さん推しなのでとても素敵な作品と出会えて幸せです…！ゆったりとした流れの中にところどころ一目惚れやそういうニュアンスに近いものが混ざっていてドキドキする感覚が大好きです。 (2018年12月31日 21時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とうふ | 作成日時：2018年12月30日 1時
