少年にはまだ受け止めきれない ページ48
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「ラウール君、隣いい?」
足が長いからか、それとも単純に早いからか、あれからラウール君を直ぐに見失って皆に見なかった聞きながらようやく見つけたのは屋上。
屋上の手摺に腕を乗せてダランとしてる。
何も言われないからきっと居ても良いんだろう。
ラ「……お姉さんさ、」
「ん?」
暫く続いた沈黙は意外にも彼が破ってくれて、なに?とそちらを向くとラウール君は長い睫毛を伏せていた。
ラ「現実を見て、この先、生きて行こうって思う?」
「え……」
ラ「俺ね高校から家が近かったんだ。それで、見ちゃったの。母さんが、化け物になってた」
言葉が出て来なかった。
化け物になっていたということは、彼のお母さんはもう……
ラ「俺はさ校舎から出られなったから、母さんが高校の前で彷徨ってるのを見ているしかなくて。そしたらね、ある事に気づいたんだよね」
ラウール君の視線はスーパーの近くにいる主婦っぽい女性に向いた。
ラ「この化け物達は死んでも、生きていた頃と同じように行動取ってるんだなって。母さんが毎朝俺に行ってらっしゃいって手を振る仕草、毎日教室から見てた」
ゾンビの主婦は、きっと毎日自転車に乗って買い物に来ていたのかな。
荷物をカゴに乗せて鍵を開ける仕草を何度も繰り返してる。
ラ「……アイツらに襲われたらその時は恐怖でいっぱいで、だから逃げなきゃってなるんだけど。こうしてたら、なんのためにこれから生きていくのって思うよね」
「えっと、」
ラ「お姉さんの家族は生きてるの?」
曇りのない瞳が真っ直ぐと私を写した。
わからない。
生きてるかなんてわからないし、今の状況を見れば可能性としては限りなく低い。
ラ「死んでたら、あれになってたら、お姉さんはどうするの?」
「私は、」
ラ「殺せる? 俺はねダメだった。先生達の目を盗んで何度か会いに行って、殺してあげたかったけど、やっぱり……毎日、手を、振ってほしくて……っ」
私を見ていた瞳が大きく開いて、ポロポロと涙が零れ落ちる。
あんな姿になって人を襲う母親なんてきっと見ているのも辛かったはずで、だから母親を手に掛けようとしたのは彼の優しさ。
だけど大好きな人を、この歳で殺すなんて……そんな選択できるわけないよね。
そして気づく、確かあの後あの辺に居たゾンビはみんな死んだはずで、
「ラウール…くん、」
ラ「っ、どうしたらいいのっ? 俺、きっと家族居なくなっちゃったっ…」
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ゆきんこ(プロフ) - ayaさん» コメントありがとうございます!はい!終わりに向かってます。これからの展開どんな風に受け止めてもらえるか不安も多いのですが決めていた事なので最後まで貫き更新頑張ります!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: bf817d2202 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 終わりに向かっていってるんですね!なぜこんな世界になったのか、、また困った展開も待ってるみたいですね!気になりますっ!!^ ^ (2021年8月15日 2時) (レス) id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 涼菜さん» ありがとうございます!!不定期更新ですがお付き合いしてもらえると嬉しいです(^^)頑張ります! (2021年7月29日 22時) (レス) id: 6bfa312962 (このIDを非表示/違反報告)
涼菜(プロフ) - いつも楽しみにしています!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2021年7月29日 14時) (レス) id: ec45b950ff (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます!彼らも前へ進みます(^^) (2021年7月29日 13時) (レス) id: 6bfa312962 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年11月19日 13時