裏切りと温もり ページ39
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話が違うと思ったのは、さっくんたちが部屋を出てから少ししてだ。
「なあ、リーダー。ほんとにロープ解いて大丈夫なのか? あいつらまだ体力残ってそうだったし外に出しただけじゃ生き残りそうだけど」
「約束だからな、"逃がしてやる"て」
えっ?と耳を疑った。
だってまだ夜は明けていないのに、今外にって言った。
「運が良ければ生き残れるさ。さあ、お楽しみの続きといくか」
男が下卑た笑みを浮かべて寄ってくる。
「待って。ほんとに何も持たせずに、あのゾンビの中に放り出したの?」
「約束だろ? 俺は直ぐに逃がしてやっただけさ」
「っ、最低!あんなところに放り出されたら逃げられるわけっ」
ないじゃん。最初から助ける気なんてなかったんじゃん。
ケラケラ笑うこの人たちは本当に人間なのかな。
襲ってくるだけのゾンビの方がマシかもしれないとさえ感じる私は可笑しいのかな。
「怒んなよ。可愛い顔が台無しだぞ?」
男の汚い手が私の制服に掛かる。
嫌だ嫌だ嫌だ!触るな!!
人殺し!お前に触られるくらいなら……
「いってえっ!!?」
がぶっと腕に噛み付いてやった。少し鉄臭く感じるくらい思っきり。
キッと睨んだら、ガッと何かに顔を殴られて蹲る。
「クソ女。大人しくしてりゃいいのによ」
「っあ、ふっ……っ」
額を押さえたらダラっと血が手についた。
霞む視界で男を見れば私に銃口を向けていて、その拳銃に血がついててそれで殴られたんだなって。
ああ、私殺されるんだ。
でもいいや、ここで男たちに好き勝手されるくらいなら死んだ方が……と諦めた時、私は思いもしなかった温もりに包まれた。
「向井。お前なんのつもり?」
「こんなん絶対間違っとる! 俺らが戦わなあかんのはあいつらやない。あの化け物たちやろ!!」
ガクガクと震える腕の中で、ああこの人はこちら側なんだって。
危ないのは変わってないのに、1人じゃないと感じてホッとした。
「だねえ。でもさ、こんな世の中だからこそ娯楽も大事じゃん? だから楽しみを邪魔すんじゃねえよ」
「アホぬかせ!こんなん楽しみちゃう!悪趣味すぎやでっ」
うっ、ぎゅうぎゅうされすぎて苦しいよ。
「ごめんなっ。俺アホやし怖くて。何が間違ってるかなんて最初から分かってたのに、こうなるまで何もしてやれんかったっ。ほんまごめんやで」
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ゆきんこ(プロフ) - ayaさん» コメントありがとうございます!はい!終わりに向かってます。これからの展開どんな風に受け止めてもらえるか不安も多いのですが決めていた事なので最後まで貫き更新頑張ります!! (2021年8月15日 10時) (レス) id: bf817d2202 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 終わりに向かっていってるんですね!なぜこんな世界になったのか、、また困った展開も待ってるみたいですね!気になりますっ!!^ ^ (2021年8月15日 2時) (レス) id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 涼菜さん» ありがとうございます!!不定期更新ですがお付き合いしてもらえると嬉しいです(^^)頑張ります! (2021年7月29日 22時) (レス) id: 6bfa312962 (このIDを非表示/違反報告)
涼菜(プロフ) - いつも楽しみにしています!これからも更新頑張ってください(*^^*) (2021年7月29日 14時) (レス) id: ec45b950ff (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます!彼らも前へ進みます(^^) (2021年7月29日 13時) (レス) id: 6bfa312962 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年11月19日 13時