Forest of the kaleidoscope4

長の使命 ページ46

JB視点

森で生活しているとわからないが、俺達の体は人間だった頃に比べて(俺にはそんな時期ないのだが)かなり進化していると言える。五感は研ぎ澄まされ、筋力は上がり、骨も一般より硬い。治癒力も高い。それでも人間よりちょっと丈夫という程度だが、一つ“森の子”には特化した能力がある
俺はドアをゆっくり開けて、中の連中に聞こえるよう声をかけた
「全員出て来い。10秒後にあの男を撃つ」
すぐに気配が近付いてきて、やがて一人がゆっくりと足を踏み入れた。俺はドアの影から飛び出して男の武器を叩き落すと、繰り出された腕を捩じり上げて腹に膝を叩き込んだ。まず1人だ
俺はすぐにドアから距離をとった。ぞろぞろと殺気を纏った男達が入ってくる。7人、そのうち3人は銃を構えている。俺はにっと笑ってみせ、言った
「来いよ、俺を捕らえてみろ。でもお前達には俺を殺せない」
先程取り上げたナイフを握り締める
「俺はイム・ジェボム……“森の子”の長だ」
言い終わるや否やナイフをまっすぐ飛ばす。それは正面で銃を構える男の肩に命中した。身をかがめて突進し、その男の銃を奪って立て続けに3発撃った
一族に特化した能力とは、動体視力だ。森の中の時間はゆっくりだが、“森の子”の動作は早い。それに慣れているせいか、人間の動きは酷く遅く見えるのだ。感覚を研ぎ澄ませ集中すると、全ての動きがゆっくりに見える。おまけに“森の子”の薄い気配に比べて人間はとても“うるさい”。サイレンサー付きの銃は弾速が遅い。俺なら殺気を向けられた時点で気付いて避けられる
「その程度で俺を捕らえようと思ったのか！？舐めてくれたもんだな！！」
すでに敵は3人だ。1分も経たずに無力化された仲間を見て顔面蒼白になっている。“森の子”がちょっと丈夫な程度だと思っていたのだろう。だが丈夫なだけでは長は務まらない。長は森と“森の子”を守る使命を負っている。そのことをハルモニに聞かされた時から俺は毎日訓練を欠かさなかった
俺が取り上げたナイフを投げると銃を持った男の足に刺さり、反動で発砲した弾が俺の横の男に命中した。残る1人に俺は近付いた
「…ッ化け物」
「その化け物に喧嘩を売った。一生後悔すればいい。お前達は森を怒らせたも同然だ」
戦意が失せたらしい男の肩に手を置き、言った
「あの男は貰っていく。チェ・ヨングァンに伝えろ。“お前に息子はいない。ホン・タンとエンブレムが交換だ。それ以外には応じない”」
そう言って俺は男の腹に拳を叩き込んだ

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