駆け引き ページ44
ユギョム視点
―――お前は重心が安定してるし体格もいい
―――鍛え方次第で“才能”は伸びる
その言葉に基づいて、ジェボム兄さんは鬼のような訓練を課した。おかげで町で轢かれた時のような無様なことにはならない自信もついた。代わりに沸いて来たのは怒りだ
ヨンジェ兄さんの義兄はベンベンをジェボム兄さんと思っている。だから僕のことを平気で轢けたのだ。最悪鍵とエンブレム、後継者だけを守れれば構わないらしい。チョルさんもタンさんも俺達も、彼らにとっては邪魔な小石同然だ。腹が立つ。せめて一矢報いてやりたい
屋上に人が近付く気配がした。数人で、敵意を纏っている。俺はポケットから小袋を取り出し、中の胡桃をいくつか噛み砕いた。それだけで感覚が研ぎ澄まされる。やがてドアが開いた
「……随分挑発的な招待状だな」
説明会で進行をしていた人事の男が、最後に提出したアンケート用紙を見せる
―――森に用があるなら、6号館屋上に1人で来い
「……“森の子”の身体能力を舐めてる?俺は一人で来いと言った」
「悪いが君達と違って私は人間だ。身を守らなければ」
俺は一気に距離を詰めて男の腕を捻り上げ、上着の中に隠してあった銃を引き抜いた。サイレンサー付きだ。隙を見て俺を殺すつもりだった
「…ッ!!」
「全員動くな。俺は森の中じゃ一番同化してない方だけど、それでもすでに人間ではなくなってる。拳銃を握るのは初めてだからうっかり頭をぶち抜くかもな」
銃を首筋に押し付けてやると、男は震える声で言った
「…全員下がれ」
ドアの向こうにいた連中が離れていくのがわかる。俺はドアを閉めるとそこに男を押し付け、銃を突きつけた。これで中にいる連中もうかつに突破出来ない
「タンさんが交換材料には弱いと思って俺を殺そうとしたのか」
「私は指示に従っただけで。銃も自衛のため。事情は知らん」
「その指輪、分家だろ」
黒曜石に開いた本3つ。この指輪をするのは分家だけだと言っていた。つまり一族の人間だ。おそらく末端だろう
「雇い主に言え。森の逆鱗に触れたら鍵もエンブレムも永久に失われる。タンさんに何かあれば即刻破壊する」
「困るのは本家の坊ちゃんだろう。大事な友人を失うぞ。自分達が優位だと勘違いしているようだだが、何も森を破滅へ追い込むのに森へ入る必要はないんだぞ」
そう言って男は鼻で笑うように言った
「キム・ユギョム、1997年11月17日生まれ、A型。失踪届が出されているな。親はあまり真剣に探していないらしい」
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くたろまりあん(プロフ) - ゆうさん» 最近更新停滞気味な上に久々の更新が番外編、コメ返まで遅れてまことに申し訳ない限りです(涙)ムネアツをお届けできていたなら嬉しいです!!頑張って話を続けますので、これからも温かく不肖くたろを見守って下さい!! (2016年4月28日 17時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんにちは!初めまして!くたろまりあんさんのForest of the kaleidoscopeがとてもすばらしくて、もう何度めかは分からない程には1~現在まで振り返りは読み返してます。今までずっと静かに静かに読んでましたが、もう押さえ切れません。素敵なムネアツあざます!!! (2016年4月24日 14時) (レス) id: 2bedd12a2f (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - 醤油ベースさん» いいんですよ、私もそう書いてましたから(笑)今回彼がジニョンを守っていたというのは今朝思い付いたばかりなんで(笑) (2016年4月6日 18時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
醤油ベース(プロフ) - 今までチョルの馬鹿って思っててごめんなさい…。 (2016年4月6日 16時) (レス) id: 35dfa964ba (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - kafuさん» 財閥といったらあれでしょう(笑)…ご自愛くださいませ(笑) (2016年4月5日 15時) (レス) id: 25f472dd75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2016年1月21日 7時