依頼 ページ42
JB視点
ランチ時を少し過ぎたからか、オフィスビルが立ち並ぶこの辺りに人通りは少ない。ぽつんとある喫茶店に入っても、客はほんの数人だった。俺はまっすぐ奥の席を目指す。一人の男性が今にも皿の上のサンドイッチに突っ伏しそうになっていた
「珈琲2つ」
「かしこまりました」
向かいに座って注文すると、男性が目を覚ましたのか顔をあげた
「……他にも席は空いてるよ」
「見ればわかる」
「カツアゲじゃなさそうだね。一見派手で強面に見えるけど、骨格や筋肉の様子を見る限り真面目な労働者という感じだ。指が節くれだって指先が荒れてるのは、日常的に手を使った仕事をしているからだ。カツアゲなんていう不健全な行動には至りにくい」
一目見ただけでわかるらしい。一応俺の仕事は工房の経営なのだが、畑仕事や薪割りなど、確かに手を使った労働は多い
「何の用かな」
「個人的に調べてほしいことがある。それも内密に」
「悪いけど研究所に無断で依頼を受けるわけにはいかない。クビになる」
「ならないだろう。あんたは跡継ぎだ」
「気に入らないね。僕のことをそこまで知っているくせに、自分は名乗らないのか」
「チェ・ヨンジェの“家族”だ」
ヨンジェの名前を出した途端、彼は顔色を変えた。ということはつまり、ヨンジェの周りが穏やかでないことを知っているということだ
「彼の居所は知らないと言ったはずだ」
「財閥とは関係ないしヨンジェは俺と一緒にいるからあんたに聞く必要もない。むしろ俺とここであったことが財閥に知られるのは困るんだ」
「僕に何をしろっていうんだ!!」
俺は身を乗り出し、A4サイズの封筒を手渡した。
「中のものを調べてほしい。赤いテープで番号を振ってあるのはDNAを、それ以外は成分を調べてほしい。あるものの付着物だ」
「あるものってなんだ」
「それは言えない。大至急、極秘で調べてほしい。出来る限りの謝礼は払うし、結果を受け取る際にヨンジェと会わせる」
「あるもの……死体だな」
思わずぎくっとすると、男性は溜息を吐いた
「まだ君も若いね。DNAと付着物と来ればだいたい見当はつくよ。これを警察に持っていこうか」
「ヨンジェがあんたなら信用出来ると言ったんだぞ」
「死体が彼のものでないという証拠は?」
「ヨンジェは俺の腹違いの弟だ」
余計胡散臭い顔をする男に俺は続けた
「確証はない。だから調べてくれ。封筒の中にヨンジェからのメモが入ってる。見たら燃やせ」
そう言って俺はテーブルに金を置き、店を後にした
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くたろまりあん(プロフ) - ゆうさん» 最近更新停滞気味な上に久々の更新が番外編、コメ返まで遅れてまことに申し訳ない限りです(涙)ムネアツをお届けできていたなら嬉しいです!!頑張って話を続けますので、これからも温かく不肖くたろを見守って下さい!! (2016年4月28日 17時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんにちは!初めまして!くたろまりあんさんのForest of the kaleidoscopeがとてもすばらしくて、もう何度めかは分からない程には1~現在まで振り返りは読み返してます。今までずっと静かに静かに読んでましたが、もう押さえ切れません。素敵なムネアツあざます!!! (2016年4月24日 14時) (レス) id: 2bedd12a2f (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - 醤油ベースさん» いいんですよ、私もそう書いてましたから(笑)今回彼がジニョンを守っていたというのは今朝思い付いたばかりなんで(笑) (2016年4月6日 18時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
醤油ベース(プロフ) - 今までチョルの馬鹿って思っててごめんなさい…。 (2016年4月6日 16時) (レス) id: 35dfa964ba (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - kafuさん» 財閥といったらあれでしょう(笑)…ご自愛くださいませ(笑) (2016年4月5日 15時) (レス) id: 25f472dd75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2016年1月21日 7時