バンシーの危機 ページ33
JB視点
マークの手伝いで畑仕事を終え、工房に帰るとハルコが居眠りしていた。制作作業は休んだのか、日当たりのいい場所で揺り椅子に座って眠っている
もともとこの椅子はハルモニのものだった。暖かい日は窓際で、寒い日は暖炉のそばで揺られながら編み物をしていた。森から帰って来るとよくハルモニがそこでうたた寝していて、俺達はその足元に集まって一緒に寝ていた
ハルコは刺繍をしていたらしい。道具を膝の上から退かして、顔を覗き込む。幼い頃から片時も離れず一緒にいたため、俺達の関係に波乱や危機はほとんどなかった。喧嘩する事はあったが、ハルモニの人格をがっつり受け継いだハルコが圧倒的に大人で、すぐに仲直りを持ちかけてくれた
「…なんか老夫婦みたいだな、俺ら」
俺はハルコの頬に指を滑らせた。ふわふわと猫のお腹のように柔らかく、暖かかった
JH「起きろこら!!」
「…ッいって」
げしっと蹴飛ばされて目を覚ました。俺は揺り椅子に凭れて眠っていたらしい。見上げると何故かスーツ姿のジヒョンがいた
「……お前何そのかっこ。どうした、タンさんから接触があったか」
JH「財閥から言伝だ。ホン・タンはもう森に来られない」
俺が飛び上がった拍子に椅子が揺れ、ハルコが目を覚ました。寝ぼけ眼でジヒョンを見て、その服装に首を傾げる
JH「店にもう何日も見張りがついていた。撒くためにこの格好したんだよ」
「どういう事だ。タンさんに何があった?」
JH「わからん。今朝いきなり男が何人も自宅に来て、そう言った。あの坊やに、会いたければ会いに来いと。俺を連絡役にしていた事がばれたんだろうな。坊やに言ったって事はあの子がこの森にいることももうばれてる」
ハルコが椅子から立ち上がって、近くの紙とペンを取った
「ジェボム、納戸から一番小さい木箱を持ってきてちょうだい。この事をヨンジェ君が知ったら絶対に財閥に戻ろうとするわ。あの子の第六感を掻い潜るには“ひみつごと”で隠すしかない」
JH「ちょっと待て。それが何なのかは知らないけど、坊やに言わないつもりか?あのバンシーは坊やの友達だろ」
「おびき出されて森に戻って来られなかったらどうするの!!」
「ハルコ落ち着け…確かにヨンジェを行かせるわけにはいかないけど黙っているのも違う。タンさんを見捨てることになるんだぞ」
そう言うとハルコは怯んだ。相手は財閥だ。俺達はどうしても不利にならざるを得ない。いまだに財閥の明確な狙いもわかっていないのだ
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くたろまりあん(プロフ) - ゆうさん» 最近更新停滞気味な上に久々の更新が番外編、コメ返まで遅れてまことに申し訳ない限りです(涙)ムネアツをお届けできていたなら嬉しいです!!頑張って話を続けますので、これからも温かく不肖くたろを見守って下さい!! (2016年4月28日 17時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんにちは!初めまして!くたろまりあんさんのForest of the kaleidoscopeがとてもすばらしくて、もう何度めかは分からない程には1~現在まで振り返りは読み返してます。今までずっと静かに静かに読んでましたが、もう押さえ切れません。素敵なムネアツあざます!!! (2016年4月24日 14時) (レス) id: 2bedd12a2f (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - 醤油ベースさん» いいんですよ、私もそう書いてましたから(笑)今回彼がジニョンを守っていたというのは今朝思い付いたばかりなんで(笑) (2016年4月6日 18時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
醤油ベース(プロフ) - 今までチョルの馬鹿って思っててごめんなさい…。 (2016年4月6日 16時) (レス) id: 35dfa964ba (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - kafuさん» 財閥といったらあれでしょう(笑)…ご自愛くださいませ(笑) (2016年4月5日 15時) (レス) id: 25f472dd75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2016年1月21日 7時