Forest of the kaleidoscope4

ジンクス無効(煮詰まったので過去編) ページ26

JB視点

―――今日からお前の妹だよ
―――ハルコって呼んでやりなさい
ハルモニはそう言った。紹介された女の子は俺よりずっと小さくて、弱かった。羽を怪我した小鳥のように震えていて、怯えた目で俺を見た。彼女は言葉が通じなかった
学校の友達は男ばかりだったから、俺にとって女の子は未知の生き物だった。うっかり触ったら壊してしまいそうで、だが目を離すと川に落ちたり毒蛇に噛まれたりしないかと心配で、俺は一定の距離を保って常にそばにいた
「そっちに行っちゃ駄目だ。毒草が生えてる」
通じないのかハルコはそのまま進もうとするので、俺は腕を掴んで止めた。顔の前で手でバツを作ってやるとようやく伝わったようで、小さく頷いて方向転換した。寄りにもよって今度は熊の出るあたりに行こうとしたので再び引き留めた
それから彼女は俺にくっついていれば安全だと学んだらしい。生まれたてのカルガモのようにくっついて来るので呆れてしまった。こうなるとさすがに言葉が通じないのが不便なので、図書館で日本語の辞書を借りて、彼女に韓国語を教えた
今思うと当然だが、上達は早かった。3日もすれば韓国の子供レベルには達し、一日中「何で、どうして」を繰り返された。何で漆は触っちゃいけないの、どうしてヘビを見たら逃げるの―――どうしてこの森には3人しかいないの
森の一族は絶滅寸前で、マークが来るまで森には俺達3人しかいなかった

両親がない俺にハルモニはいろいろな事を本で教えてくれた。その中には女の子の話もあって、俺はそこで学んだことを実践した。ハルコが泣かないようにそばにいて、泣いたら慰めてあげるというものだ。嵐の夜、ハルコがしくしく泣きながら俺の部屋に来たので雷が怖いのかと慰めてあげると、舌足らずな韓国語で言った
―――ねるの、こわい
その時のハルコが可愛かったのと、寝てくれなきゃ困るというのがあって、俺は本の中で読んだおまじないを実行した。瞼にキスをしたのだ。その日一緒に寝てやると彼女は翌朝すこぶる機嫌が悪く、俺に学校へ行くなと駄々を捏ねた
―――ドキドキ、わたしだけ。ずるい！！
そう言ってハルコは俺の左瞼にキスをした。俺はたいそうパニックになり、最終的に何を思ったか彼女にプロポーズまでしてしまった
―――記憶がない私にとって、初めて見た男の子がジェボムだったのよ
―――そこであんな気障な事されたら、いちころよねぇ
子供だった。だが初恋は実らないというジンクスをうち破ったいい例とも言える

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