氷のアーチ ページ1
YJ「わぁー僕のせいにしてるー」
末っ子達の声は森のすんだ空気によく通る。ヨンジェ君は近付けば自分も確実に訓練に参加せざるを得なくなるとわかっているので近付こうともしない。森に彼らの様子を聞いては楽しそうに笑っている
「ヨンジェ君言ったでしょ、木のそばは歩いちゃ駄目よ。一回落ちたらあなたじゃ自力で上がって来れないわ。ジェボム達が平気なのは雪を踏み抜かない様にしてるからよ、忍者みたいなもの」
YJ「…僕だってジェボム兄さんの訓練受けてるもん」
「じゃぁ深さ1.5mの穴に頭から突っ込んでも大丈夫?私は助けられないよ」
YJ「……」
ジェボム曰くヨンジェ君の運動能力は「人間としては超人だが、“森の子”としては超鈍くさい」らしく、要するに“森の子”の中ではおそらく私の次くらいに鈍い。私も昔は訓練をしたが、それで一度指を怪我した時にジェボムが「指は万華鏡作家の命だ」と言って訓練をなくしてしまった
YJ「この間ね、ジニョン兄さんと一緒に泉の向こうに行ったんです。そしたらそこの木が皆凍ってて、そのうちの一本なんか全体が氷に覆われてたの。太陽でキラキラ光って凄く綺麗だった」
そう言ってにこにこしながらヨンジェ君は雪を掘る。埋まっている小石や木の実を拾うのだ
「…私も昔よく見たわ。小さい頃ハルモニがそれを妖精の仕業だって言って、ずっと信じてた」
YJ「この森ならあり得そうですよね。僕、木があんな風になるの初めて見ました」
「都会じゃあり得ないもの……あ」
ふと思いついて思わず頬が緩む。首を傾げるヨンジェ君に私は言った
「その木のある場所、連れてってくれる?」
「…やっぱりね」
ヨンジェ君の案内で来た場所に私は吹き出した
YJ「やっぱりって?」
「最近来なくなったけど、確かにここの木は毎年凍る。ここ、私とジェボムが結婚式挙げた場所なんだ」
途端にヨンジェ君が目を輝かせ始めた。枝の一本一本まで凍った木々は、つららの垂れた枝でアーチを作っている。まさしく自然の芸術だ
「ヨンジェ君もここで式挙げる?ジニョン喜ぶよ」
YJ「…やだぁ〜」
「……そんな乙女な反応が返って来るとは」
照れ照れしているヨンジェ君はふと気が付いたようにじっと一本の木を見つめた。このあたりで一番綺麗に凍っている木だ
YJ「…根元に何かある」
おそらく森が教えてしまったのだろう。ヨンジェ君は興味津々だ
「タイムカプセルを埋めてあるのよ。式の日、5人でね」
今よりずっと子供だったが、人生で一番幸せな日だったと思う
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くたろまりあん(プロフ) - ゆうさん» 最近更新停滞気味な上に久々の更新が番外編、コメ返まで遅れてまことに申し訳ない限りです(涙)ムネアツをお届けできていたなら嬉しいです!!頑張って話を続けますので、これからも温かく不肖くたろを見守って下さい!! (2016年4月28日 17時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんにちは!初めまして!くたろまりあんさんのForest of the kaleidoscopeがとてもすばらしくて、もう何度めかは分からない程には1~現在まで振り返りは読み返してます。今までずっと静かに静かに読んでましたが、もう押さえ切れません。素敵なムネアツあざます!!! (2016年4月24日 14時) (レス) id: 2bedd12a2f (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - 醤油ベースさん» いいんですよ、私もそう書いてましたから(笑)今回彼がジニョンを守っていたというのは今朝思い付いたばかりなんで(笑) (2016年4月6日 18時) (レス) id: e40acf0397 (このIDを非表示/違反報告)
醤油ベース(プロフ) - 今までチョルの馬鹿って思っててごめんなさい…。 (2016年4月6日 16時) (レス) id: 35dfa964ba (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - kafuさん» 財閥といったらあれでしょう(笑)…ご自愛くださいませ(笑) (2016年4月5日 15時) (レス) id: 25f472dd75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2016年1月21日 7時