家族気取り ページ48
ジョンウ視点
施設を案内しながらサノが話をする。サノというのは組織で彼が使っていた名前だ。おそらく本名だろう。彼は僕と同じく組織に入る前の記憶をなくしていなかった
「組織から逃げるのには成功したんだけど、戸籍も怪しいようなやつ雇ってくれるとこはない。食い詰めて仕方なく別のもっと小さい組織に入り直した。小さいといっても下請けだから、親はでかい」
買われて組織に入るのと、自ら入るのとでは待遇が違う。サノは僕と同じ殺し屋訓練を受けていたから、組織には使えると判断されたはずだ
「仕事したんだな」
「……」
「記憶喪失のふりをして自分に認識妨害の能力をかけたのは構成員として起訴されるのを免れるため？自分から組織に入って殺し屋としての道を選んだなら、たとえA・Sであっても刑務所行きは免れない」
「お前は何でここにいるんだよ。あの後シェルターに駆け込んだとか？」
「一緒に逃げたやつに囮にされたせいで組織に殺されかけた。逃げるためにカージャックしたのがたまたまここの車だったんだ。ジャニ兄、あの人元戦闘員」
するとサノは吐き捨てるように言った
「俺よりうまくやったんだな。司法取引したのか、組織の情報を売って」
「組織の情報を売って、いざという時に証人になって、数年ここで働くことを条件に起訴を免れた。運がよかったよ。ありがとうね、あの時制御装置を僕にくれて」
嫌味のつもりで言った。効いたのか、サノは僕を睨みつけた
「で？仕返しに俺を売るつもりか。俺だって生き延びるのに必死だったんだ」
「わかってるよ。別に売らない。元殺し屋ってのは僕も同じだし……仕事を受ける前に保護されたのは幸運だっただけだ。でも」
僕はシュッと手を伸ばしてサノの喉元に指をあてた。少し力を籠めれば潰せる
「ここの人達に少しでも危害をくわえたら殺す」
「お前が俺を？無理だろ。お前落ちこぼれだったじゃん。“死なない”以外にとりえはない」
「試してみる？」
喉の指に力を籠めると、サノは何も言わずに手をあげた。僕も手を離す
「ここにいたいならずっと記憶喪失のふりをしてろ。少しでも殺し屋の片鱗を見せてここの人達を危険に晒したら、お前をシェルターになんか売らない……僕が殺す」
「……もう家族気取りかよ」
サノは鼻で笑った。脱走を決意するまではちゃんと喋ったこともなかった。組織では商品同士の結束を嫌うため、仲良くさせたがらない。こんなやつだったか？
「心配しなくても、ここではいい子にしてるよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くたろまりあん(プロフ) - akkoroさん» どよちの春はだいぶ先かな〜www (2022年5月3日 16時) (
レス) id: 7d1417b277 (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - こあらさん» ありがとうございます！！！ (2022年5月3日 16時) (レス) id: 7d1417b277 (このIDを非表示/違反報告)
akkoro(プロフ) - 更新ありがとうございます^_^ ドヨチーっいいヤツだわ やっぱり ドヨチも幸せになってほしいです^ ^ (2022年4月19日 0時) (レス) @page1 id: 79727b217b (このIDを非表示/違反報告)
こあら(プロフ) - 今回も楽しく読ませていただきました‼︎ (2022年4月15日 19時) (レス) @page44 id: 454ea92083 (このIDを非表示/違反報告)
くたろまりあん(プロフ) - akkoroさん» 毎度ありがとうございます(*´∇｀*)96って中間管理職振られることが多いんですかね？(笑)だからか自然とブレインに寄ってる気がします(笑)どよち、複雑だけど人魚くんを親友として大事に思ってるんです… (2022年4月15日 18時) (レス) id: 3c3df00dbc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2020年5月31日 6時
