お勉強の時間 ページ10
ジョンハン視点
当然穏やかにとはいっても、背嚢ある治癒のガラス玉を使うことは決まっていたし、銃でいくらか脅しつけてやってもいいと考えていたのだが、業者のビルに来てみたら拍子抜けだった
「誰もいないじゃん……むかつくな」
WH「むかつくからってぶっぱなすなよ」
「するわけないでしょそんなこと。根に持ってんですかウォノさん」
闘犬事件の時に俺が起こした揉め事のせいで面倒なことになったと、後方支援部隊のウォノさんは今でも恨み言を言う。八つ当たりしようにも、相手がいない―――のか？
「…徹底的に探して。人でも物でも、変なものは全部」
WH「了解。皆散ってー、わかれて捜索するよ。あ、君は俺とねジョンハン君」
「何で。そんなに信用ない？そんなにブチ切れて見える？」
WH「司令さんからメールで“ジョンハンはブチ切れて見えない時が一番ブチ切れてるから、ヤバいと思ったら殴ってでも止めろと」
「ひどい。ウォノさんの筋肉に殴られたら頸椎損傷だよ」
俺は銃を構えたまま慎重にオフィスを捜索する。と、足元で何かがパキッと音をたてた。拾ってみるとガラスのかけらだ
WH「縁が丸いね。眼鏡のレンズかな」
「このあたりで乱闘があったか、余程慌てていて自分で踏んづけたかだね。たぶん……この辺に」
今となっては胡散臭い資格証明書が飾られた壁に向かって歩き、数歩戻って、もう一度歩いた。ジョシュアがスイスの銀行でのことを話してくれた時、確か言っていた気がする
「床が傾斜してる……業者の居場所がわかったぞ」
俺は背嚢から治癒のガラス玉を取り出すと、足元にそっと置いた。それはゆっくりころころと転がっていく。壁際に置かれた観葉植物だが、埃の跡から考えて数�册阿�されている。鉢を退かすと加圧式の小さなスイッチパネルがあった。それを俺が踏むのと、プシュッと音がして壁の一部がスライドするのと、そこへガラス玉が転がり込むのは同時だった
WH「おぉ、ビンゴ。さすが正規戦闘員は違うね」
「ふむ……そう来なくっちゃな」
真っ青な顔の中年男からこちらに向けているナイフを叩き落し、鼻面を一発殴ってから背負い投げで床に叩き付け、俺はその腹に膝を押し付けながら指をバキバキ鳴らして微笑みかけた。男は泡を吹く寸前で、ウォノさんはいつでも俺を殴れるようスタンバイしている
「さーて…お勉強の時間だ。基地司令直伝の“教育法”を見せてやろうじゃないか。あんたの足元に転がってるガラス玉がおおいに役立つだろうな」
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
