甘えん坊とへっぽこ ページ49
ミンギュ視点
「一応申し上げておきますけどね、ミミ兄」
「……」
「ここは俺の実家なんですのよ」
俺はローテーブルの下で丸くなるミミ兄をつついて言った。あの後店の近くを散々探し回るも見つからず、植え込みや室外機の裏など野良猫がいそうな場所も探したがそれでも見つからず、まさかと思って実家に来てみたらこれだ。母は黙々とじゃがいもの皮を剥きながら言う
「ミミさんもようやくうちに馴染んだみたいね。驚いたわよ、インターホンが鳴るから出たらぽろぽろ泣きながら何も言わずに上がり込んで、そのままそこで寝ちゃったんだから」
「猫かよ」
「いつまでも借りてきた猫だと思ってたけど、こんなに甘えてくれるなら嬉しいわね」
ジョンハン兄の母親に泣かされて、頼るのが俺の母か。いいけど、別にいいけど
「俺に甘えてくれたっていいんじゃないですかねー…」
「何かあったの?」
「ちょっとね。俺の仲間が結婚することになって、病んじゃったの」
「また余計なこと考えたんでしょう。頭でっかちだからミミさんは。ミンギュ、あんたもご飯食べていくでしょう」
結婚が決まった直後、ジョンハン兄はシベリアで死にかけた。命を懸けて世界を救った。この先も何度同じことが起こるかわからない。ジョン・テギョンがいる限り脅威は去らないし、この世から血族が一人残らずいなくならない限り、シェルターも存在し続ける。俺達が生きているうちは無理だろう
「…ミミ兄はこれから先も病み続けるんだろうなぁ」
「難儀な子ねぇ。恋人のあんたはへっぽこだというのに」
「ちょっと」
「まぁその方がバランスが取れていいかもね。あんたまでややこしい思考回路をしていたらミミさんショートしちゃうわよ」
「俺が単純明快なバカだとでもいうんですかね」
否定してくれないことに拗ねて、俺はローテーブルの足元に寝転がった。ミミ兄の寝顔はやっぱり子供みたいで可愛い
「…母さんに甘えるようになったってことだよね、今日のこれ」
「そうじゃなかったら堅物のミミさんが何も言わずに上がり込んで泣きながら寝るなんてことしないでしょう。ようやく年相応になったわね。20代なんて、どんなに大人ぶっていてもまだまだお子様なんですからね」
母さんはミミ兄を司令としてではなく、息子の恋人として見てくれている。ヒョンが比較的素直に甘えるのもそのせいだろう。そう考えると、やっぱり母は偉大だと思う
「……ありがとね」
「何が?」
「何でもないよ」
そう言って俺はそっと目を閉じた
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2018年2月19日 23時