銃弾と寿命 ページ46
「よくぬけぬけとそんなことが言えたわね」
ユン夫人の声を振るえているが、感情的な様子はない。ただ俺を憎んでいるだけだ
「あの子はどこにやっても恥ずかしくない立派な子だったのよ。成績優秀でとてもハンサムで、妹をとても大事にして、親孝行もした。それなのに今じゃ」
「今じゃ何だ」
俺の低い声にユン夫人がびくっと肩を揺らした
「今じゃ立派じゃないってか？家族を守るために一人引き離され保護されて、ただ生かされることに漫然とせず戦闘員というくそろくでもない職を選んだ。毎日毎日扱かれてどやされて潰れそうになっても奮起して訓練を重ねて、今じゃどこにやっても恥ずかしくない立派な戦闘員だ」
「な、ん…」
「俺が基地に赴任して最初の任務であいつは自分から志願した。俺が使えないやつは引っ込んでろと言ってやるとその日から鬼のように自主練した。何度も俺のところに来て消しゴムぶん投げながら自分を鍛えろとしつこく言ってきた。逃げても殴っても聞きやしねえ」
ジョンハンは腕立てで俺が背中を踏みつけると散々罵って文句を言うが、絶対に足を下ろせなどとは言わない。死ぬ気で体を起こす
「今まで何度も任務で死にかけた。自分の倍くらいある屈強な野郎共を丸腰のまま叩きのめしたこともある。つい数日前まで世界が終わるかもしれないっていう恐怖と重圧の中仲間と一緒に死ぬ気で乗り切った」
「それのどこが立派だというんですか。戦時中でもあるまいし、兵士となった息子を誇りに思えとでも？とんでもないファシストね」
「その舌ぶち抜かれたくなかったら口を慎め」
俺の言葉にユン夫人はぎょっとして口を押さえた
「本性を現したわね」
「黙れ。戦闘員と兵士は違う。その違いも知らんくせにファシストとは笑わせる。それに今が戦時中じゃないって？俺達は毎日が戦争なんだよ。あいつがどんな覚悟でどれだけの銃弾を敵に浴びせたと思ってる」
普段あまり考えないようにしているからか、戦闘員の親はよく忘れている―――自分の子が放った銃弾が多くの犯罪者の命を奪っていることを
「あんたの娘は血族戦闘員の兄を持った。そのせいで人質にジョンハンを脅そうと狙う組織がどれだけいるだろうな」
「……ッ」
「あいつが一発銃を撃つたびに、妹の寿命が一日伸びる。イェウンさんやソウンさんやユジンの命が一日伸びる。あいつがどういう思いで戦闘員になっていようと、それは事実だ。血反吐吐くような努力と覚悟を知っても、あんたは息子を否定するのか」
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
