自慢の我が子 ページ45
「あなたが何と言おうと息子はやめさせます」
ユン夫人は外に出てドアを閉めた途端ぴしゃりと言った。意義は認めないといった様子だが、それでも言わざるを得ない
「同じ言葉を今までいろんな親御さんから100回くらい言われたんですがね、そう簡単にやめられないんですよ戦闘員ってのは。それとお母さん、あなたに辞めさせる権限もありません」
「私は親ですよ」
「まず第一に戦闘員になったのはご子息の意思であり、候補生から昇格の際にも一度バッジを手にしたらそう簡単にはやめられない旨を伝えたうえでの意思です。ご子息は既に成人しているうえに監護権の最終保持者は俺なので、お母さんが何と言っても彼の意思がない限りやめることは出来ないんですよ」
「息子はこれから説得します。結婚して娘も出来てやっと安心出来ると思ったのに、戦闘員なんてとんでもありません」
「お言葉ですがね、彼が所帯を持つのを祝福するのであればなおさら説得は無駄ですよ」
一度ジョンハンが愚痴交じりに話してくれたことがある。彼は一家でも自慢の長男だった。成績優秀で運動神経も抜群(基地での訓練は規格外なのだ)、学校でもご近所でも有名で、おまけにあの美貌だ。ユン夫人は自分の血を濃く受け継いだ息子をたいそう大事にしていた
―――だからこそわかるんだよね……態度の端々に、血族でさえなければって思ってんのがわかるんだ
ジョンハンの愚痴をジョシュアは黙って聞いていた。彼も同じ境遇だからだ
「前にもお話したはずです。ご子息は今までに多くの任務に当たって来て、いくつもの機密に触れている。万が一シェルターを辞める場合は保護プログラムが適用し全てを記憶を消す。ご実家とも、新しい家族とも二度と会えない」
本当は別の方法もなくはない。俺の元部下のジャニのように、シェルターと提携する保護施設の職員として出向させるのだ。だがこれはかなり特例なことで、滅多なことでは認められない。ジャニの時も俺と所長が相当ごり押したし、ジャニがある血族の個人ブローカーを務めていたことから認められたことだ。それでも辞令が下れば任務に当たることになっている。つまり機密に触れた戦闘員がシェルターを辞めることは、記憶の削除以外に実質不可能なのだ
「…機密に触れていなければ、やめられたというの?」
「ええ、実際そういう例は多い。ですがご子息は自分から望んで機密に…」
パン、と思い切り頬を叩かれた。幸い中の皆は気付いていないらしい
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作者名:くたろまりあん | 作成日時:2018年2月19日 23時