瞬間移動と消失 ページ39
エスクプス視点
俺とジョンハンはそのまま本部に送られ、ソクジン先生の治療を受けた。バーノンはかなり危なかったそうだが、レイ先生の治癒が何とか間に合ったらしい
だがさすがに俺達も限界だった。気がつくと気を失っていて、泥のように眠り、目を覚ました時には20時間ほどたっていた。世界が終わるはずだった時間から、20時間だ
「起きたか」
「ッ……司令」
司令が俺のベッドの上にテーブルを渡し、そこに湯気の立つ食事を置いた。途端に腹が鳴る
「食え。死ぬほど空腹だろう」
「いただきます」
思えば爆発までの10時間で携帯糧食を少し口にした以外、二日以上何も食べていなかった。腹も減るはずだ。司令はあっという間に空になった茶碗に黙って飯をよそい、俺が満腹になるまで待ってくれた
「落ち着いたか」
「はい…何とか」
「ジョンハンはまだ寝てる、ある意味大物かな」
司令はトレーを下げてテーブルをどかし、クッションを積んでそこに俺を凭れさせた。そして頭にポンと手を置く
「よくやった。あの危機的状況下で冷静かつ的確な判断を下した。おかげで戦争は回避された。自慢の部下で、右腕だな」
あの時一瞬見えた黒い影はカイさんだ。彼は敵が能力解除を解き、何らかの方法で爆撃する前の一瞬の隙をついて現れ、ウランを回収していった。俺達が瞬間移動のガラス玉で基地に飛んだ次の瞬間、テントは爆撃で吹き飛んだ
問題はウランがこの世にある限り爆撃で狙われ続け、いつでも戦争の引き金になり得るという点だが、それも解決済みだ
「ロキ先輩の能力、覚えてたんだな」
「副司令ともなるとある程度組織内政治にも詳しくなりますから。所長派の中心メンバーはだいたい把握してます」
ロキさんは“消失”の血族だ。命あるもの以外、彼が願えばこの世から永久に消滅する。カイさんが回収したウランをロキさんが能力で消したのだ。あのウランによるテロはもうありえない
「それから爆弾の方、よく思いついたな」
「…手掛かりは少しでも多い方がいいですから」
テントから500m先で燃える車が発見された。ウランを消した今あの爆弾は今回の事件の数少ない物証だ。だから敵の爆撃で消し炭にされては困る。地雷にも耐えうると言われるあの車の中で爆発すれば、多少爆発の威力は抑えられ証拠の回収もしやすくなる
「お前はよくやったよ副司令。だからしばらくゆっくり休め」
「でも捜査はまだ…」
「本部が引き継いだ。ジョン班が担当だから信頼出来る、シギ兄もいるしな」
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作者名：くたろまりあん
| 作成日時：2018年2月19日 23時
